高野孟
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高野孟ジャーナリスト

1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。

岩田明子氏の目を通すと「安倍外交」の貧困が礼賛にすり替わってしまう不思議

公開日: 更新日:

 誰よりも安倍晋三元首相から信頼──という以上に寵愛と言っていいほどの親密な関係を築いた元NHK政治部の岩田明子記者が「安倍晋三秘録」と題して「文芸春秋」に連載を始めたので、一体どんな秘話が出てくるのかと期待して読んだが、早くも11月号の第2回で「もう勘弁してよ」という感じになってきた。

 この回は、安倍がいかに「テタテ(通訳だけを交えた首脳同士の1対1の会談)」を最大活用して華麗なる外交を繰り広げたかの賛美に終始していて、その中の多くは安倍がいかにしてトランプ前大統領に食い入って米朝首脳会談を実現させ、それを通じて拉致問題の解決をトランプの口から金正恩に伝えてもらうよう腐心したかという話で占められている。

 確かにトランプはハノイでの米朝首脳会談でそれを持ち出し、直後に安倍に電話をして「約束通り拉致問題に言及した。(後は)シンゾーから金正恩に電話をして(直接交渉して)くれ」と助言した。だが、その後、安倍がどのルートから連絡を試みても、金正恩にはつながらなかった、と岩田は書いている。

 安倍は拉致被害者の方々の前に出ると「最終的には私が直接、条件をつけずに金正恩委員長と向き合って」と決まり文句のように繰り返したが、現実には、向き合うどころか電話1本かけられるチャンネルも持っておらず、それを糊塗するために、この問題に何の関心もないトランプに無理やり頼み込んで米朝間の議題に持ち出してもらった。

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