「サイレント・ブルー」樋口明雄著
金曜日の朝、秋津俊介は妻に渡されたコップの水が薄茶色に見えるのに気づいた。口に含んだら錆のような味がする。秋津は東京から八ケ岳南麓の標高1200メートルの高原の分譲地に移住してきた。近所の家の水も濁っていると聞いて、不動産管理会社に連絡し、検査してもらったら鉄とマンガンの数値が高い。何かの変動で地下水が変質したと説明され、揚水バルブにフィルターを取り付けて対処することに。
その後、水はきれいになったが、市内にミネラルウオーターの会社が5社もあるのが、秋津は気になった。ある日、バスルームで息子が叫んだ。
「ママ、お湯が出ないよ」
自然環境を脅かすウオータービジネスを描く社会派小説。
(光文社 1800円+税)