<第1回>ひと言でいうと“へたくそ”なんですよ、生き方が
「若い頃、長い階段を一気に駆け上がるように映画もテレビも出演しましたが、この役だったら洋子チャンだというイメージをこしらえる前に小説を書いちゃった。だから、高橋洋子は女優なのか、作家なのか、イメージの分散が起こってしまった。それというのも、藤田敏八さんから『おまえさんは自分のキャラが定着する前に小説を書いちまったな』と言われましたし、自分でも“なるほど”と思いました。でも、寺山修司さんは『小説を書いた女優をだね、使ってみたいと思うのは僕ぐらいなもんだよ』と余裕をもって言ってくれましたが、使う側にとっては扱いづらい存在になってしまったんでしょうね。本当は役者をやりたいくせに事務所に所属しなかったり。長期的なビジョンが立てられず、目先のものばかりを追いかけちゃう。ひと言でいうと、へたくそなんですよ、生き方が(苦笑い)」
13年ぶりの新作小説「のっぴき庵」(講談社)では、辛酸をなめ、年を重ねてきた今だからこそ書ける思いを紡いだ。「読者を心底楽しませたい、その一心で書きました」。エンターテインメントにとことんこだわった作品。かつて脚光を浴びた俳優や女優たちの人生の悲哀をユーモラスに描いている。