昆虫化石が伝える太古の日本の姿「ムシの考古学図鑑」森勇一著

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昆虫化石が伝える太古の日本の姿「ムシの考古学図鑑」森勇一著

 嫌われ者のゴキブリが、3億年も前から地球上に生息していたことは周知の事実。それも現在とほぼ同じ形態だというから驚きだ。しかし、そんな太古の昆虫のことがなぜ分かるのか。それは昆虫の化石が、多くのことを教えてくれたからだ。

 本書は、日本各地の遺跡調査で見つかった昆虫化石を紹介しながら、当時の日本の姿を解説するグラフィックテキスト。

 岩手県の「大渡Ⅱ遺跡」(3万年前の旧石器時代)から石器とともに2種類のゲンゴロウの化石が出土。その1つは、北海道東部からサハリン・中国東北部などに生息する亜寒帯性のクロヒメゲンゴロウだった。

 同じ地層から発見された植物の花粉などの分析から、遺跡が位置する土地の当時の気温は、年平均で9.2度ないし4.6度低かったと考えられる。ゲンゴロウは水生昆虫にもかかわらずよく飛ぶ。北海道やさらにその北方にいた、小さなゲンゴロウたちが本州を目指して津軽海峡を渡り、大部分は力尽きて海峡に落下したが、わずかな成功者とその子孫が化石となり見つかっているのだという。

 埼玉県のデーノタメ遺跡の5000年前の縄文時代中期ごろの地層からは、コアオハナムグリやヒメコガネの化石が出土。両種とも、人が維持・管理することによって成立する植生のみに依存して生息する人里昆虫である。ゆえに、デーノタメ遺跡では、縄文人たちが自然に手を加えムラの周りに畑作物を植栽していた姿が想像されるという。

 以降、弥生時代の朝日遺跡(愛知県)から出土したマグソコガネなどの大量の食糞性昆虫、信長に焼き打ちにされた岩倉城跡から出土したナミテントウなど、40余の遺跡で見つかったさまざまな時代の昆虫化石を手掛かりに日本の在りし日の姿を浮かび上がらせる。

(雄山閣 3300円)

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