竹内薫(サイエンス作家)鈴木光司さん、またいつか宇宙と時空の神秘を語り合おう
5月×日 友人の鈴木光司さんが亡くなった。夜遅く、娘さんからメッセージが入ったが、突然のことで信じられない。
5月×日 カトリック教会で行われたミサと告別式に出席。帰りの電車で、この前、一緒に食事をしたときの会話を思い出し、涙が止まらない。いつもみたいに2人で3時間ほど談笑して、「じゃあ、また」と言って別れたのだ。今から思えば、あれが永遠の別れとなってしまった。食事の翌日にもらったメールには「昨日の会話で出た物理学者の名前なんだっけ?」とあり、「ホアン・マルダセナです」と返していた。
5月×日 そのマルダセナが物理学の世界に衝撃を与えた仮説は、広く「ホログラフィー原理」と呼ばれている。世界はホログラフィーみたいなもの、という大胆な仮説だが、最近、一般向けの解説書が出た。橋本幸士著「ホログラフィー原理とはなにか」(講談社 1320円)は、気鋭の物理学者が、ホログラフィー原理の最先端を噛み砕いて教えてくれる。数式を使わず、ここまでわかりやすく解説できるなんて凄い。
5月×日 カナダの高校に通っている娘から電話が来た。キャンプで麻薬を吸ってラリった同級生がいて、「キャンプが台無しになった」と、先生に抗議したそうだ。日本だと未成年の飲酒が問題になるが、カナダでは一部の麻薬が合法化されており、好奇心から麻薬に手を出すティーンエイジャーが後を絶たない。保護者の私からも、生活指導の先生宛に、まじめな生徒が精神的に傷つくから、注意喚起をして欲しいと要望書を送った。
5月×日 鈴木光司さんの遺作「ユビキタス」(KADOKAWA 2035円)を再読。確か4部作の最初の巻という位置づけだったはず。私と彼の友情は、20年前、小説に使う物理ネタを提供したときにまで遡る。頻繁に会って話をし、彼は、毎回、熱心にメモを取っていた。次回作では、ホログラフィー原理がどんな風に料理される予定だったのだろう。友よ、安らかに眠れ。またいつか宇宙と時空の神秘を語り合おう。



















