生きられるまで生きたい…故郷への帰郷が支えた最期の日々
80歳の患者さんは、3年前まで左官職人として働き、奥さまと2人で暮らしていました。2024年に前立腺がんと診断され、同年2月に手術。その時点ですでに肺と大腿骨への転移が見つかっていました。
患者さんは抗がん剤治療を希望されず、翌年には症状緩和を目的に放射線治療を受けましたが、その際に担当医から「これ以上の治療は難しい」と説明を受けました。
患者さんご夫妻は「経済的にも余裕がないので、できるだけ自宅で過ごしたい」と希望され、在宅医療を開始することになりました。
自宅療養の手続きを進める中で、保険証の住所が実際に暮らしている新宿区ではなく、郷里の秋田県のままであることが分かりました。
「30代で上京した時に住民票を移そうとしたら、役所で“農家の長男だから移さない方がいい”と言われて、そのままなんです」
患者さんはそう振り返りました。話を聞くと、秋田県には息子さんがいるものの、長く疎遠になり、ほとんど会っていないとのことでした。しかし患者さんは、「悔いが残らないように」と、これを機に故郷へ帰り、息子さんに会う決心をされました。私たちは、旅先で万が一のことがあっても対応できるよう、病状を記した診療情報提供書を持ち歩くよう提案しました。


















