大鶴義丹が北の工作員に「国に身を捧げた男をどう演じる」

公開日: 更新日:

 北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんの悲劇を描いた映画「めぐみへの誓い」(野伏翔監督)がこのほど完成し、24日、憲政記念館(千代田区)で完成披露試写会が催された。「単なるプロパガンダでも写実でもなくエンターテインメントに昇華させた」と野伏監督が語る意欲作。めぐみさんを拉致した工作員シンガンシュンという難役を演じた大鶴義丹(52)に話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

「僕が演じたシンガンシュンは拉致事件の実行犯という戦後最大の大悪役。ですが、私利私欲で動く強盗や殺人犯とも悪党とも違う。歪んでいるとはいえ国家からの責務に身を捧げた男をどう演じたものか……。非情に難しくて複雑な心境でした」

■朝鮮語指導は脱北者の元アナウンサー

 国家事業としての拉致に手を染めるマシンのように冷徹な工作員。人間関係も偶然を装った接触も、計算尽くされた不気味さがスクリーンから漂う。役者としてのキャリアは長い大鶴だが、苦労したのが初めての朝鮮語のセリフだった。

「1月から専門家についてレッスンを始めたのですが、なんとその先生は脱北者で元アナウンサーの女性。現在は日本人と結婚し増田京子さんとしてメディアにも出ている方でした。あの独特の口調のニュース番組もマネしていただきました。似てますね~と言ったら、北のニュース番組に出ている女性アナウンサーの本当の後輩だから当然ですというので2度ビックリです」

 韓国語とも異なる北朝鮮のなまりやイントネーションが身につくまで苦労したそうだが、途中、こんな背筋が寒くなる瞬間もあったという。

「先生に言われたのは、この作品は北朝鮮も必ずチェックしている。あなたは工作員役だから北をおとしめている。入国したら現地で逮捕されますよ。絶対に行かないでくださいと。北朝鮮観光は諦めました」

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」