失敗にめげずニコニコの精神が成長の原動力に「発達障害の私だからこそ、成功できた」似鳥昭雄著/祥伝社(選者:稲垣えみ子)

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「発達障害の私だからこそ、成功できた」似鳥昭雄著/祥伝社

 発達障害とは、生来の機能の発達の偏りによりコミュニケーションや学習、行動コントロールなどに困難が生じる状態。1割が抱えるとも言われ、我が友人にも普通にいて、ちょっと変わった人として仲良く付き合っているのだが、職場の同僚となるとそうはいかなかった記憶がある。

 会社員時代、時間や約束が守れず基本動作で同じミスを繰り返す新人と出会い、途方に暮れた。真面目でやる気いっぱいなのになぜ? 結局、私は彼女に仕事を任すことを避けた。今にして思えば発達障害の特性だったと思うが、どうすればよかったのか今もわからない。

 なので、ニトリの創業者が発達障害を公表したときには驚いたし、シビアなビジネスの現場で障害をどうカバーしたのか、とても知りたかった。

 一言で言ってしまえば、できないことだらけでも1%の長所を伸ばせばよいというのが本書の主眼である。会話が苦手で整理整頓が全くできず、ゆえに接客も書類仕事もからきしダメ。なのでそこは人に任せ、新しいアイデアをどんどん思いつき、夢中になればとことん打ち込む障害の特性を会社を成長させる原動力にしてきたのだという。

 ただそれは経営者だから使える手だろう。逆に言えば、経営者になったからこそ氏は成功したのである。そこに至るまでには壮絶な挫折の歴史があり、むしろ私はそこに心打たれた。「知恵遅れ」と蔑まれ、叱られ、いじめられ、就職してもクビ。自分はダメ人間と自死も考えた。それでも突破口を求めて手当たり次第やってみる行動力がすごい。漫画絵の模写、ソロバン、ボクシング、ナンパ……と何でもあり。失敗は数知れないが、それでもめげずに挑戦を続けジタバタしたからこそ起業にたどり着いたのである。

 ならば、本当に肝心なのはその「めげないチャレンジ精神」ではないか。氏はそのめげなさの理由を、忘れ物が多いだけじゃなく失敗も忘れる、と笑い飛ばすが、その忘れっぽさも発達障害の特性なのだとしたら、もはや何が短所で何が長所なのかよくわからなくなってくる。

 そしてもう一つ、氏を支えたのが「明るさ」である。幼い頃、極寒の北海道で家業のヤミ米配達を手伝わされ、寒さに震えていたら「ニコニコしていなさい」と母親に頭を叩かれ、怖くてニコニコしていたら配達先の人がリンゴをくれた。以来、どんないじめにあってもニコニコ。人の縁を引き寄せる最大の原動力となった。全く人生とは計り知れない。 ★★半


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