高座で急にろれつが回らなくなって…三遊亭白鳥さんジストニアとの苦闘を振り返る

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三遊亭白鳥さん(62歳/落語家)=ジストニア

 2021年に亡くなった私の師匠である三遊亭円丈が生前、物忘れがひどくなって「自分は認知症だ」とずっと言っていたんですが、じつは自宅で倒れたときに硬膜下血腫になっていたようなのです。硬膜と脳の間に出血が起こり、血液が脳を圧迫することで認知症に似た症状が出ることがあるんだそうです。倒れてからだいぶ経ってそれとわかった時には、「時すでに遅し」でした。そんな師匠を見ていたので、頭に何かあったときにはすぐ病院に行く心づもりをしていました。

 そして25年2月、昼の高座で急にろれつが回らなくなりまして、ドキッとしました。客席も「え? 大丈夫?」という空気になり、誰も笑いません。それでも25分やり切って、夕方の寄席もぎこちないままやり終えた翌日、近場の脳を扱う病院へ自転車で向かいました。急にろれつが回らなくなったと訴えると、「それは脳梗塞の兆候だからすぐにMRIを撮らなきゃダメ」と言われ、そのまま紹介された病院へ行ってMRIを撮りました。

 幸い脳梗塞の兆候は見られませんでしたが、医師の話では「ろれつが回らない症状が出た人の4%は48時間以内に脳梗塞を発症する」というんですよ。つまり、「すぐに入院してくれ」というわけです。明日も仕事があるからと言っても、「バカなこと言っちゃいかん」ってな調子で帰してくれません。「1分、2分の違いで半身麻痺にもなる。そうなれば命を失うよりも大変なことになると思わないか」と……。

 言われてみれば、脳梗塞で倒れた先輩や仲間をたくさん見てきました。何年も闘病して復帰できずに亡くなった先輩もいます。仕事に穴をあけたくはありませんでしたが、観念して入院しました。

 とはいえ、自分はいたって元気なので、Xに「今入院しています。元気になったら戻るよ」と軽い気持ちで投稿しました。でも、その手書きの文字がひどく震えていたせいで、「三遊亭白鳥、再起不能」と書かれ、それがヤフーのトップニュースになっちゃったんです。いろんな人から「大丈夫か?」って連絡をもらいました。

 でもあれこれ検査するうちに、「脳梗塞ではなく、ジストニアではないか?」ということになり、退院して別の病院を紹介されました。ジストニアは、筋肉の異常な緊張によって引き起こされる症状で、私は舌の筋肉の過度な緊張でろれつが回らなくなったとわかりました。

 紹介された病院はプロの声楽家も通う声のクリニックがある病院で、そこで生まれて初めて舌のリハビリを受けました。私は「舌の動きがとても悪い」と診断されました。本来、発音は口を大きく開けることなく、舌の動きだけでできるものなのに、私は常に舌に力が入っていて固まっていると。

 その先生が手袋をつけて私の口に手を突っ込むわけです。それが痛いのなんのって(笑)。舌の動きにつながっている首の後ろや横、顎の辺りのマッサージやストレッチも指導されました。半年通って今は滑らかに動くようになり、ろれつの問題はなくなりました。

 結果として脳梗塞ではなかったんですけど、脳のMRIの画像を見たとき、右脳の血管がシワシワでよじれていることを指摘されました。「どうしてですか?」と聞くと、喫煙が原因だと言われました。私、加熱式たばこを毎日40本吸っていたんです。でも、そのシワシワの血管と「近いうちに脳梗塞になりますよ」という先生の言葉で即禁煙しました。

 死ぬのはいいですが、しゃべれなくなって高座に上がれないのは死ぬより嫌ですからね。

 いろいろ検査した結果、ちょっと珍しい脳の血管も見つかったので、年に1回診てもらえることになりました。だからやはりあのとき入院してよかったと思いました。

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