映画「薬の神じゃない!」が活写する中国医薬事情の暗部
「よくぞ中国で」と、試写会で映画関係者から驚きの声が相次いだ。
上海で国内未承認の抗がん剤を密売したとして、社会問題になった事件を映画化した「薬の神じゃない!」。厳しい検閲を突破できるか危ぶむ声もあるなか、いざ公開となると中国国内で興収500億円の大ヒットを記録した話題作である。
映画ファンならば、第86回アカデミー賞の主要部門で2冠に輝いた「ダラス・バイヤーズクラブ」を思い出すであろう。同作では未承認のHIV治療薬を密輸し患者に届けたカウボーイが描かれたが、「薬の神――」は慢性骨髄性白血病患者の依頼を受け、成分が同じながら安価なインドの薬の密輸密売へと、男性向け回春薬販売店の店主の男が動く。どん底人生から這い上がるための金目当てだったのが、中国で海外の医薬品を買うと税金や仲介手数料が上乗せされ、高額医療費で知られる米国の倍以上になるといった事情を知っていく。医療でも格差があり、薬を必要とする庶民の手には入らないという現実に突き動かされ……。
映画のモデルで2014年に中国で実際に起きた「陸勇事件」では、「ニセ薬」販売の罪で検察が容疑者の男を起訴すると市民や関連団体がデモを行い、起訴が撤回され男は釈放された。そして、中国での医薬業界改革のきっかけとなっていった。