(1)たった一度の成功体験でハマってしまう…「行為」の依存症
「当院には、これまで何度も痴漢や盗撮で捕まり、刑務所にも入ったことがある患者さんも来ます。彼らの中には、『自分は痴漢がやめられない』『自分は意志が弱い』といったことを話す人もいますが、意志でどうにかなる話ではありません」
そう話すのは、ライフサポートクリニックの山下悠毅院長。「薬だけに頼らない」をモットーに認知行動療法や運動療法も活用する、依存症治療のスペシャリストだ。痴漢や盗撮などの依存症は自らの意志が効かなくなる病気であることを理解しなければ「治らない」と続ける。
「まず、依存症は大きく2つに分けられます。ひとつは、たばこやアルコール、薬物といった物質の依存症。もうひとつが、ギャンブルや痴漢、盗撮といった行為の依存症です。前者は沼のように段階的にハマっていくのですが、後者はたった一度の成功体験でハマってしまう。物質依存症と同様で、やめたくてもやめられなくなり、なぜしたいのかも説明できません」(山下院長=以下同)
痴漢や盗撮を繰り返す、これら「行為依存症」の本質は「チャレンジ依存症」だと山下院長はいう。アルコールや薬物などの物質依存症は、「飲めそう、使えそう」という状況を脳が察知するとドーパミンが分泌され「使え」と指令が出る。対して行為依存症は、「チャレンジができそう」という状況を脳が察知するとドーパミンが分泌され、「触れ、撮れ」と指令が出て、意志の力で自制することができなくなる。