著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

骨粗しょう症の治療薬では顎の骨が壊死する副作用の予防策が大切

公開日: 更新日:

 骨粗しょう症やがんの骨転移に対して使われる「ビスホスホネート」や「デノスマブ」は、骨の代謝を抑えることで骨折を防ぎ、患者さんの生活の質を守る重要な薬です。しかし、これらの薬においてごくまれに「薬剤関連顎骨壊死」(MRONJ)という副作用が生じる場合があります。

 これは、顎の骨の一部が壊死(血の巡りが悪くなって死んでしまう状態)するもので、進行すると骨が口の中に露出し、感染や痛みを伴うことがあります。ひどい場合には、食事や会話が困難になるなど、日常生活に大きな支障を来す場合もあります。初期症状として歯茎の腫れや違和感、顎の痛みなどが見られ、特に抜歯などの歯科処置後や、入れ歯の不具合が発症の引き金になるケースも知られています。

 発症を防ぐためには、これら薬の服用を開始する前に歯科を受診し、治療が必要な歯があれば先に処置しておくことがとても大切です。また、服用中も定期的な口腔ケアを行い、口の中を清潔に保つことが予防につながります。

 今年3月に改定された「重篤副作用疾患別対応マニュアル」では、このMRONJについての対応が記されていて、患者さんが自らの症状に気づきやすくなるよう、初期兆候や受診の目安なども具体的に示されています。副作用が心配で薬を飲みたくないという意見もあるかもしれませんが、骨粗しょう症などでは服薬を中止することで骨折のリスクが高まる可能性もあります。不安がある場合は、医師、薬剤師、歯科医師に相談しましょう。

 薬は正しく使えば、健康を守る強い味方になります。副作用に振り回されるのではなく、正しい知識と医療者との連携で、安心して治療を続けていくことが大切なのです。

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