映画「走れロム」が描くベトナムのタブー 勝てない“闇くじ”に託すしかない人生

公開日: 更新日:

 ベトナムは日本にとって最大の出稼ぎ労働者の送り出し国だ。そのベトナムのタブーを暴いた映画が今週金曜日(9日)から公開される。チャン・タン・フイ監督の「走れロム」である。

 同作では、ベトナム最大の都市・ホーチミンの裏町を舞台に、「闇くじ」に没頭する庶民の姿が描かれる。ベトナムには地域ごとに毎日、当せん番号が発表される正規のくじがある。しかし、正規くじの当せん番号を使い、下2桁のみを当てる闇くじの方が断然人気なのだ。もちろん違法だが、フイ監督が「ベトナム名物」と呼ぶほど横行している。くじにハマって借金をつくり、自殺に追い込まれる人も後を絶たない。

 共産党の一党独裁体制下にあるベトナムは、政府の権限が日本よりはるかに強い。闇くじも取り締まる気があればできる。しかし、あえてやらない。賄賂を介し、くじの胴元と政府関係者がつながっているようなのだ。ベトナムには言論や表現の自由はなく、たとえ映画でも政府に不都合なことは描けない。この作品も当局の検閲で、韓国・釜山国際映画祭で新人監督部門最優秀作品賞を受けたオリジナルから一部カットされている。それでも闇くじに加え、地上げやストリートチルドレンの問題など、メディアでは報じられないテーマが次々に登場する。フィクションではあるが、ドキュメンタリーにも近いのだ。そこがベトナム人の共感を呼び、本国では大ヒットした。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    悠仁さま筑波大進学で起こる“ロイヤルフィーバー”…自宅から1時間半も皇族初「東大卒」断念の納得感

  2. 2

    中山美穂さん急死、自宅浴槽内に座り前のめり状態で…大好きだった“にぎやかな酒”、ヒートショックの可能性も

  3. 3

    辻仁成は「寝耳に水」 中山美穂離婚報道の“舞台裏”

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  1. 6

    中山美穂さん急逝「加齢の悩み」吐露する飾らなさで好感度アップ…“妹的存在”芸人もSNSに悲痛投稿

  2. 7

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 8

    【独自】急死の中山美穂さん“育ての親”が今朝明かしたデビュー秘話…「両親に立派な家を建ててあげたい!」

  4. 9

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  5. 10

    紅白出演をソデにした旧ジャニーズ痛恨の“判断ミス”…NHKに出たい若手タレントが大量退所危機

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?