「時代とFUCKした男」加納典明(14)ムツさんは理論、俺は感応。物事の理解の仕方がまったく違った
小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
◇ ◇ ◇
加納「ムツさんは論理的にこれはこうだとか、この馬の種類はこういう性格だとか、遺伝的にこうだとか生態的にこうだとか。俺なんかそれは見た目とそれにまたがったときに感じる感応で理解していくんだけど、俺の理解の仕方と畑さんの理解の仕方は違うわけだよ」
増田「それはたまたま馬の話ですけど、いろんな社会を理解してる、その見方っていうのがお互い違うからこそ、影響を与えあったっていうのがあるんですかね。たとえば典明さんに『一流の道具を使うべき』とか言われたのは、畑さんには衝撃的だったと思うんですよね」
加納「そうだね。その辺のことは、俺は当時の都会で写真でトップを取って、表現者の世界の情報とか、感応力で得ていたわけだよ。それが畑さんとしてはどうでもよかった世界だったんじゃないかな。でも、実際に俺に聞いてその道具を手にしてみて、使ってみて、初めて『ほう』となることがあったんだと思う。そのうち畑さんのほうから『あれはどうですかね』とか、道具のブランドなんか聞いてくることもだんだん出てきた」