著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

加納典明(13)ムツさんの論理的な頭は普通じゃなかった…キツネの謎の挙動に一発回答

公開日: 更新日:

 小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「そういう、馬にまつわる話とか、北海道の自然にまつわる話っていうのは、当時、そのときどきムツさんと話されたと思うんですけど」

加納「昨日こんなことがあったんですよとか、今日あの馬がこうだったんですよと畑さんに話すと『それは加納さん。こういうことだよ』って即答するんだよ。彼は知ってるから。馬房の人間にも尋ねたりもしたけど、畑さんはさらにモノの本質を知っていた。畑さんは明晰に論理的に物事を捉える人だから。だから、聞くと楽しい答えが返ってくるの」

増田「へえ。すごいな」

加納「あるとき、俺、1人で馬に乗って湿地帯に行って、林の中に入っていったんですよ。もう本当に林のなかの道なき道を半分行ったところでふっとキタキツネが現れて」

増田「逃げた?」

加納「いや、逃げないんです。キタキツネがいて黙ってこちらを見てるの。どうしたのかなと思ってるとトコトコと歩き始めるんだ。それでしばらく付いていくと立ち止まってまた振り返る。それでしばらく見つめ合って、またキツネはトコトコと林の奥へどんどん歩いていく。それで俺も付いていくーーそういうことを4回も5回も繰り返しているうちにキツネはどっかに消えちゃった」

増田「そのあいだ10分くらい?」

加納「いや、もっと。20分か30分くらい。人間の心理っておかしなもんだ。それに付いていくんだよ。それを繰り返してるうちに、ふっと消えてったから、なんだったんだろうなって呆然となって。何だったと思います?」

増田「う~ん、僕ではわからないですね」

加納「でしょう。で、俺、帰ってから畑さんに聞いたわけ。こんなことがあったんですと。そうしたら即断で『加納さん、それはキツネの巣がそこにあったんだよ』って。で『加納さんを遠ざけるために誘導したんだよ』って。なるほどと思った」

増田「そいつは面白いですね。ムツさんは一発で回答したんですか」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    サンド伊達レギュラー14本…40~50代の芸人に仕事集中、「リスク分散」しなかった各局のダメージ度

  2. 2

    中学時代をジャージーで過ごした鈴木奈穂子が、法政大女子高から大学に内部進学してNHK人気アナになるまで

  3. 3

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 4

    北島三郎(4)「毎日が目標です。後ろへは戻れない」 地元・八王子のイベントで生涯現役宣言

  5. 5

    「24時間テレビ」SixTONES起用もマラソン募金額46%減で“旧ジャニーズ一極集中”は終焉へ

  1. 6

    WEST.重岡大毅の結婚にファンの怒りと落胆…“祝福されないアイドル”がやらかす「3つの誤算」

  2. 7

    「24時間マラソン」満身創痍の星野真里が完走も…募金額46%減&ゴール直前の乱入騒動に非難の嵐

  3. 8

    24時間マラソン完走後にSNSで“陰謀論”が拡散 星野真里に上がった「車移動説」のお粗末

  4. 9

    山本美月は九州の女子校で偏差値トップ「筑紫女学園」から明大農学部へ 祖父も生物教師の“リケジョ”

  5. 10

    水前寺清子(1)作詞家・星野哲郎への恩と愛称「チータ」誕生の理由

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「24時間テレビ」SixTONES起用もマラソン募金額46%減で“旧ジャニーズ一極集中”は終焉へ

  2. 2

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 3

    NHK出演にSNSでは抗議の声も…彬子女王と伊藤穰一氏をつなぐ「裏千家」とブータン王室の深い関係

  4. 4

    (2)「おニャン子クラブ」の二の舞いを回避した「順位付け」という競争原理はグループを飛躍的に活性化させた

  5. 5

    「タンス預金2000万円」相続税はどうやってバレる? 税務署が追う“亡き親の出金”

  1. 6

    一発で免許停止も…9月から法定速度改正「時速30キロ」生活道路の見分け方

  2. 7

    水前寺清子(1)作詞家・星野哲郎への恩と愛称「チータ」誕生の理由

  3. 8

    自民党内に内閣改造の“タマ”がいない…女性閣僚「目玉不在」に高市首相が“苦悶”

  4. 9

    24時間マラソン完走後にSNSで“陰謀論”が拡散 星野真里に上がった「車移動説」のお粗末

  5. 10

    止まらない「人手不足倒産」…8月は過去最多を記録、もはや“ブラック企業”は成り立たない