【アイ・ワズ・ア・ストレンジャー】シリア内戦の実話が描く圧倒の人間ドラマ

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本作は「人間とは何ぞや」という問いかけへの回答だ

 シリア内戦は2011年に始まった。アサド政権が倒れた24年までに1500万人が国内に避難したとされる。本作はそうした悲劇の国情を医師、兵士、密航業者、詩人、そして船長の5人の章立てで描く群像劇。

 爆音とともに一瞬で破壊される家屋、少年までも公開処刑するアサド政府軍の司令官、難民を利用して稼ぐ密航業者。人の命など何の価値も持たない戦場の狂気とエゴイズムを通して、5人それぞれの境遇が結びつく。戦争の恐怖と人間の愚かさを訴えながら、最後は人間賛歌ともいえる感動の展開。見事な脚本だ。

 手持ちカメラが縦横無尽に動き、物語がスピーディーに進行。戦争の悲惨さがこれでもかとばかり描写され、観客は息苦しさを覚えながらもスクリーンに釘付けになってしまう。ニューヨークの空撮から始まる冒頭場面にトランプタワーが映し出されるのはブラント・アンダーセン監督のメッセージだろう。

 アンダーセン監督はこう語っている。

「観客にまるで自分がこの物語の主体的な参加者であるかのように感じてもらいたかった。ゲームの中にいる感覚ではなく、ずっと引き込まれ続ける体験を。これらは実話だからこそ、様々な視点から物語を体験してほしい。だからこそ章立てにしたのです」

 よく「文学作品はストーリーを追うのではない。人間を描くのだ」と言われる。映画も文学作品の一部とすれば、本作は「人間とは何ぞや」という問いかけへの回答だ。迫力の映像に引き込まれていただきたい。(配給=ハーク)

(文=森田健司)

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