「野球学校」との対戦をどう思う? 超進学校・東筑の山下監督が語った赤裸々な回答
山下聖士監督(東筑/福岡/45歳)
明日6日に神村学園(鹿児島)と対戦する東筑は、9年ぶりに甲子園に出場する福岡県有数の県立進学校。毎年、東大と京大に複数の合格者を出している。昨秋から母校を率いて就任1年目の山下監督は数学教諭。限られた練習時間と環境の中で、いかにして激戦区の福岡を勝ち抜いたのか。就任時に感じたプレッシャーや、絶対的エースに頼らず勝ち上がったチームづくりについて聞いた。今回は【前編】。
◇ ◇ ◇
──福岡の私学3強の牙城を崩し、甲子園出場を果たしました。
「強豪私学に対して、どう戦うかは常に意識してきました。昨秋、今春と私立に敗れた悔しさも、この夏の原動力になったと思います。準決勝の九州国際大付戦では大量失点するイニングをつくらず、取られたら取り返す展開に持ち込めた。相手にも安心できる雰囲気はなかったと思います。最後に逆転できたのは、本当に選手たちがすごかったです。また、これまで甲子園に出場した時は、一人のピッチャーに頼る形でした。30年前も9年前もそうです。ただ、今回はさまざまな場面でリリーフを起用し、投手を分業して勝ち上がることができた。公立高校が絶対的なエース一人ではなく、投手リレーで甲子園に届いたことは、大きな成果だと思います」
──東筑にとって甲子園は「夢」か、「現実的な目標」か、どちらでしたか。
「夢というより、現実的な目標でした。夏の大会では、目の前の一戦一戦を大事にしようと話していましたが、その先にある甲子園は毎年意識しています。今回も『甲子園で校歌を歌う』という目標を掲げてスタートしました。選手たちも、勉強と野球を両立しながら、本気で甲子園を目指すつもりで東筑に来ていると思います」
──監督就任1年目。プレッシャーはありましたか。
「正直、ありました。昨春の福岡大会で優勝し、九州大会に出場したチームの中心選手には、当時2年生だった選手が多くいました。今チームは彼らが主力となるだけに、順調に成長すれば甲子園も狙えるのではと。その分、周囲からの期待も大きく、監督1年目の自分が、この選手たちをどううまく伸ばしてあげられるかというところにプレッシャーを感じていました。青野前監督が偉大だったこともあります」
──練習環境には多くの制約があります。
「グラウンドはサッカー部、ラグビー部と共用しているので、土日は基本的に午後からの練習です。平日も水曜と木曜は内野しか使えません。ただ、そこは割り切るしかありません。内野しか使えないなら、内野でできる練習をしっかりやる。ノックもできますし、全面を使えない日は、練習時間の半分ほどをウエートに充てることもあります」
──ナイター設備がなく、冬場は暗くなるのも早い。
「完全下校の時間は季節にかかわらず午後8時です。暗い中でもできるティー打撃などで、スイングの量を確保することはできます。内野にはある程度の照明があるので、工夫しながら打撃練習を行い、特に冬場は量をこなすことを意識してきました」
──進学校として、学業にも注力しなくてはいけません。
「土曜日が模試でつぶれることもあります。ただ、『時間が足りないから仕方がない』『環境が悪いから勝てない』ということは、言い訳にしたくないよねと部員には話しています。限られた時間や環境を、逆にプラスに働かせることが大切です。グラウンドが十分に使えないことも、勉強があることも、絶対に言い訳にはしたくありません」
──「野球学校」は、東筑には負けられないと対抗心を燃やしているのでは。
「どうなんでしょう。野球に対する思いや情熱は、どの学校も共通していると思います。私立の強豪校で、親元を離れて寮生活を送る選手たちにも、並々ならぬ覚悟があるはずです。グラウンドに立てば、学校の特色や環境は関係ありません。野球への強い思いと、勝ちたいという互いの気持ちがぶつかり合う。純粋に野球で、互いにいい試合ができればと常に思っています」
(聞き手=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)
【後編】では、プロ注目バッテリーを含む有力選手が東筑に集まる理由や、入試制度、医学部志望者4人を抱える文武両道の実情、卒業後の進路、初戦で対戦する神村学園への思いを語ってもらった。


















