プロ注目バッテリーの進路は? 福岡有数の進学校・東筑に有力選手が集まる秘訣
山下聖士監督(東筑/福岡/45歳)
9年ぶりの夏の甲子園出場を果たした東筑には、プロから注目される深町、平山のバッテリーをはじめ、学力と野球の実力を兼ね備えた選手が集まっている。今チームには医学部志望者も4人いるという。どうしたらこんなチームができるのか。山下聖士監督(45)に入試制度や選手の進路、教員ならではの選手との向き合い方を聞いた。(【前編】からつづく)
◇ ◇ ◇
──バッテリーはプロ注目選手。選手はどう集めているのですか。
「地元には、勉強ができて野球の力もある中学生がいます。そうした選手たちが『勉強も野球も頑張るなら東筑に行きたい』と思ってくれることが、楽しみな選手が集まる理由だと思います。毎年ある程度勝ち上がり、県大会の上位を狙ってきた伝統も大きいですね」
──選手たちは一般入試ですか、推薦入試ですか。
「過半数は一般入試ですが、県が採用している『推薦入試』の部員もいます。1学年の定員280人に対し、推薦入試の枠があり、その中でラグビー部、男女バレー部など、各部活動との兼ね合いで決まるので、人数は毎年まちまちです」
──推薦には内申点などの基準がありますが、超有望球児に「ゲタ」を履かせたりは。
「基準より低かったら絶対ダメです。推薦入試にも定められた基準があり、その条件を満たさなければいけません。部活動だけでなく、学力や生徒会活動など、中学校生活の中で本人が何を強みにしてきたのかを含めて推薦されます。野球がうまいというだけで入学できるわけではありません」
──今チームには医学部志望者が4人います。文武両道をどう実践しているのでしょうか。
「もともと学校の授業レベルが非常に高く、まずはその授業に必死についていくこと自体が勉強になっています。野球部に限らず、全校生徒の8~9割が部活動に入っているため、空き時間や隙間時間を有効に使って勉強する校風、環境があります。午後8時が完全下校時刻となっており、学校帰りに塾へ通う選手もいます。野球をする時は野球に集中し、終われば勉強へ切り替える。その積み重ねです」
──甲子園に滞在している間も、3年生は受験勉強をしていますか。
「今は野球に集中している選手が多いと思います。大会が終わってから、スイッチを切り替えることになるでしょう。3年生15人のうち、3分の2ほどは一般受験で国公立大学への進学を希望しています。私立大学で野球を続けたいという選手もいますが、多くはこれから本格的な受験勉強に入ります」
──医学部志望の4人については。
「現役での医学部合格は簡単ではありません。ただ、野球を最後までやり切った後、気持ちを切り替えて一気に伸びる生徒はいます。野球部の先輩にも、医学部へ進み、医師になった方がたくさんいます。時間はかかるかもしれませんが、十分に可能性はあると思うので、頑張ってほしいですね」
──プロ注目のエース深町、捕手の平山の進路は。
「深町は早い段階から大学進学を希望しています。平山はまだ考えている段階なので、大会が終わってから本人や保護者と話をするつもりです。プロの方が興味を持ってくださっていることは分かっていますが、今は目の前の甲子園に集中しています」
──山下監督は進学とプロ入り、どちらがいいと思いますか。
「東筑関係者が10人いたら、9人、あるいは10人全員が『大学進学』と言うでしょう。指定校推薦や一般入試を含め、名門大学へ進学できるチャンスがあります。そこで大学野球を経験し、その先にプロへ行ける可能性があるなら、その道を選んだ方がいいのではないか、という考えは強いと思います。一方で、プロへ挑戦できる機会も限られている。こればかりはタイミングや運もあります。大人は大学へ進んだ方が将来の選択肢が広がると考えます。ただ、子供たちにとっては、目の前にプロへ挑戦できる機会があれば、そこへ行きたいと思うのも間違いではありません。最後は本人が納得して決めることが一番大事だと思います」
──監督として、教え子をプロへ送り出したいという思いはありますか。
「プロへ送り込みたいという気持ちは特にありません。ただ、将来、プロの世界や日の丸を背負う舞台で活躍する選手が東筑から出てくれたら、うれしいですね」
──ご自身も東筑から国立大へ進み、教員になった。その経歴は進路指導にも生きているのでは。
「グラウンドに出てきた時は野球だけですが、学校内ではいろいろな話をしています。大学受験に関しても、私個人的に思うことや、これまでの先輩たちも含めて、その都度その都度、答えられているとは思います」
──選手の学校生活に関わっていることは、プラスに働いていますか。
「非常に大きいです。私が直接授業を見る選手は限られますが、職員室にいれば、ほかの先生方から普段の様子を聞くことができます。褒められたことも、指導が必要なことも、その都度選手と向き合える。ここぞという場面で力を発揮できるかは、日頃の振る舞いや性格にも表れると思うので、そうした野球以外の姿もメンバー選考や起用の参考にしています。そこは教員監督の強みだと思います」
──初戦の相手は優勝候補の一角、神村学園です。
「神村学園さんは非常に鍛え上げられたチームで、最後まで諦めない粘り強さがあります。ただ、東筑も福岡大会では粘り強い守りで勝ち上がってきました。序盤で突き放されず、僅差のまま食らいついていけば、勝機が出てくるはず。これまでとは逆に、最後にこちらが逆転するのか、リードを守って逃げ切るのか。甲子園という舞台で、そういう試合をしたいです」
(聞き手=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)


















