名実ともに新派の大看板だった水谷八重子さんが、川口浩さんの死に際に見せた涙
親同士が仲が良く、俳優仲間でもある良重さんに取材を申し込むと、「大阪の舞台に出演中」とのこと。昼の部と夜の部の合間に時間が取れると言われ、当時僕は午後のワイドショーを担当していたことから楽屋から生中継させてもらった。
マネジャーに「良重さん、泣いてくれますかねぇ?」と聞いてみたら、「そんなの分からないよ。本人次第」と返された。中継が始まり、良重さんと川口さんの懐かしい映像を流して見てもらうと、見事に大粒の涙があふれてきて、「もう、泣かそうとしてこんなVTR、用意したんですね」と言いながら訥々と思い出を語ってくれた。
中継が終わり、音声こそ流れていないが、スタジオには生の映像が流れていることを伝えると、ハンカチで涙を抑える姿のままでいてくれた。その瞬間、目覚まし時計のベルが鳴り、僕たちはビックリしたが、良重さんは動じず「すぐ鳴りやみます」とささやく。こちらよりも生中継のプロだと思ったものだ。
ある新作舞台の通し稽古では、共演の故・沢たまきさんらとステージ上にいたのだが、演出家に叱られている新人役者が何度も長ゼリフを言わされる中、彼女だけがリアクションの芝居を続けていた。
根っからの舞台人、さすがは新派のトップだと思わされたものだ。



















