「共同親権」導入のメリットとデメリット 民法改正で本当に子育てが容易になるのか?
離婚後の子供の親権について法制審議会の部会が民法改正のたたき台を示した。現行の民法では離婚後はどちらか一方に決める必要があるが、離婚後も双方に親権を認める「共同親権」が盛り込まれたことで注目された。共同親権なら離婚後も共に子育てに関わることが容易になるため、メリットがあると思われがちだが、単純にそうとも言い切れない側面もある。
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■単独親権だから子供に会えないわけではない
毎年、約20万組前後が離婚する昨今(婚姻件数は約50万組)、離婚を機に子供になかなか会えなくなった親たちがいる。
《パパに会えなくて子供が泣いています》
《日本は単独親権だから親子断絶が起きる》
そのような主張を聞くと、気の毒に思う人も多いかもしれない。現在、離婚後の共同親権の導入を強く求めているのは、主に子供となかなか会えない別居親(父親)たちだが、そう単純な話ではない。
日本では、離婚後の親権者を父母の一方に定める単独親権制度を採用。ただし、親権の有無にかかわらず、日常の世話や子供と会う条件、養育費などについては協議で決めることができる(民法766条1項)。そもそも離婚した両親の意思疎通がうまくいっていれば、子供は両親間を自由に行き来できるが、そうではない場合でも、別居親が家裁の取り決めに従って子供に会う「面会交流」という制度がある。
「単独親権だからといって子供に会えないということはありません」
こう話すのは、家事事件に詳しい岡村晴美弁護士。岡村弁護士はDVや虐待、いじめ、パワハラ案件などに取り組み、立場の弱い側に寄り添ってきた。関わる案件の多くは低所得者も利用しやすい法テラス経由。手間がかかるわりには利益が少ないため、多くの弁護士はやりたがらない。
「2012年の法改正以降、裁判所は面会交流原則実施の立場をとってきました。中学生以上だと子供の意思(会いたい・会いたくない)が尊重されますが、小学生以下の場合はちょっとやそっとの拒否なら、『子供が嫌がっても歯医者に連れていく』と同じ論理で、裁判所は会わせようとします」
同居親が裁判所の決定に従わない場合には罰金の支払いや親権を認められなくなるリスクもある。それほど厳しい条件を課せられているにもかかわらず、一部面会交流が認められないのは、子供の利益にならないと判断された場合だ。
「最も多いのが、子供の拒否感が強いケースです」(岡村弁護士)
子供が会いたがらないのは「同居親の刷り込み」と考える別居親は多いが、実際には同居していた頃の嫌な経験が原因である場合が少なくないというのだ。