著者のコラム一覧
文谷数重元3等海佐・軍事研究家

1973年、埼玉県生まれ。早大大学院修了。元3等海佐・軍事研究家

怪しい兵器開発計画が目白押し、目的は防衛産業へのバラマキ…自衛隊は強くならない

公開日: 更新日:

 そして極超音速ミサイルである。これは20キロメートル以上の高空をマッハ6から8で飛ぶ兵器だ。来年度だけでも合計3200億円を支出する計画である。

 実用性からして怪しい。「高速なので迎撃ミサイルでは撃墜できない」と説明している。ただ、命中直前には空気抵抗が大きい低空に降りる。その時は100秒でマッハ3まで減速してしまう。しかも、直線飛行になるので迎撃は容易だ。

 技術的な困難もある。空気との法外な摩擦熱が生じるためミサイル全体の冷却は必須だが、その実現は宇宙ロケット開発よりも難しい。日本の宇宙航空産業には荷が重い。

 価格も問題となる。完成しても1発30億円や50億円では数は揃わない。それなら10倍の数のトマホークを買うほうがよいとなる。

 なぜこのような事業を進めるのか。

 防衛産業へのバラマキのためである。与党が強引な防衛費増額を推進したのはそのためだ。そしてバラまくには大金を支払う名分、最先端の雰囲気がある事業が必要だ。だから新戦闘機や人工衛星、極超音速を持ち出したのだ。成功の見込みなしは承知である。

 防衛産業の業績は改善するだろう。ざっと1兆円の補助金に相当する。ただし産業は腐る。補助金で衣食すれば業界は防衛の寄生虫になる。

 また自衛隊が強くなるわけでもない。防衛産業が富んでも防衛力の強化とはならないのである。 (つづく)

【連載】防衛予算8.5兆円 概算要求は本当に必要か

■関連キーワード

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 政治のアクセスランキング

  1. 1

    自維連立に透ける実現不能の“空手形”…維新が「絶対条件」と拘る議員定数削減にもウラがある

  2. 2

    自維連立が秒読みで「橋下徹大臣」爆誕説が急浮上…維新は閣内協力でも深刻人材難

  3. 3

    高市自維政権で進む病人・弱者切り捨て…医療費削減ありき「病床11万床潰し」すでに3党合意の非情

  4. 4

    高市新政権“激ヤバ議員”登用のワケ…閣僚起用報道の片山さつき氏&松島みどり氏は疑惑で大炎上の過去

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「維新連立入り」観測に焦りまくり…“男の嫉妬”が見苦しすぎる

  1. 6

    「連合」が自民との連立は認めず…国民民主党・玉木代表に残された「次の一手」

  2. 7

    維新の「議員定数1割削減」に潜む欺瞞…連立入りの絶対条件は“焼け太り”狙った露骨な党利党略

  3. 8

    打算だらけの自維連立…維新が突きつけた「企業・団体献金禁止」はやはりウヤムヤ? 怪しい本気度

  4. 9

    国民民主から維新に乗り換えた高市自民が「政治の安定」を掲げて「数合わせヤドカリ連立」を急ぐワケ

  5. 10

    公明票消失で自民衆院「東京選挙区」が全滅危機…「萩生田だけは勘弁ならねぇ」の遺恨消えず

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    ドラフト目玉投手・石垣元気はメジャーから好条件オファー届かず…第1希望は「日本ハム経由で米挑戦」

  3. 3

    高市自維政権で進む病人・弱者切り捨て…医療費削減ありき「病床11万床潰し」すでに3党合意の非情

  4. 4

    創価学会OB長井秀和氏が語る公明党 「政権離脱」のウラと学会芸能人チーム「芸術部」の今後

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    ソフトバンクに激震!メジャー再挑戦狙うFA有原航平を「巨人が獲得に乗り出す」の怪情報

  2. 7

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    米価暴落の兆し…すでに「コメ余り」シフトで今度こそ生産者にトドメ

  5. 10

    まだ無名の「アマNo.1サウスポー」評価爆上がり!23日ドラフト「外れ1位」なら大争奪戦も…