「生きるとか 死ぬとか 父親とか」ジェーン・スー著
24歳で母を亡くした「私」は、母の「妻」としての顔や「女」としての生きざまを知らないことに気づいた。父についても同じ思いをしたくないと、父のことを書こうと決める。
ある日、父が引っ越しすることをほのめかし、借りようとしている部屋を写真で見せてくれた。図面を見た私は「ぎゃあ!」と声を上げた。かなりゆったりした2LDKだ。家賃を尋ねると、父の年金より1万円ほど多い。収入がない賃貸希望者は1年分を前納する必要があり、すでに仮申し込みをしたと言う。私は気前よく「いいよ」と答えた。「いいけど、君のことを書くよ」。「いいよ」。今度は父が気前よく言った。家族を描いたユーモラスなエッセー。
(新潮社 1400円+税)