「トットひとり」黒柳徹子著

公開日: 更新日:

 自伝的物語「窓ぎわのトットちゃん」がベストセラーになってから30余年が過ぎて、トットちゃんの身辺は大きく変わった。家族とも思っていた大事な人、大好きな人、自分と同じにおいのする人たちが、一人また一人と亡くなった。そんな人たちの思い出を、深い愛情を込めて書いたエッセー集。子どものころから観察するのが大好きだったというトットちゃんの記憶の中から、あの人、この人の楽しくて悲しいエピソードがあふれ出す。

 ある時期のトットちゃんは、霞町で一人暮らしをしていた向田邦子さんのもとに入りびたっていた。おなかがすくと、あり合わせのもので手早くおかずをつくってごはんを食べさせてくれた。時がたち、ふと思い立って向田さんに電話をすると、台湾旅行中との留守番電話。その日のちょうどその時刻、向田さんは台湾で飛行機の上だった。

 森繁久彌さんは、最初に会ったころから、「1回、どう?」が口癖で、それが50年も続いた。老いても枯れない人だった。兄ちゃんと慕う渥美清さんは、いつも「お嬢さん」と呼んでいる妹分をよくからかった。母さんと呼んでいた沢村貞子さん、もう一人の兄ちゃん杉浦直樹さん、お姉ちゃんの山岡久乃さん。トットちゃんの周りには、優しくて、面白くて、凄い人ばかり。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ