「選べなかった命」河合香織著
田中光は4人目の子供を妊娠したとき、羊水検査は陰性だと言われて安心して出産したが、生まれた子・天聖はダウン症だった。医師は自分のミスを認めた。天聖をかわいいと思えないと光は自分を責めたが、一過性骨髄異常増殖症で苦しむ天聖の姿に、この子ががんばるのは生きたいからだと気づく。
「私たちのもとに帰って来て、我が家で過ごしたいからなんだ」。3カ月半で天聖は死んだ。生存中から、ミスをした医師に訴えを起こしてほしいと言われていた。だが、慰謝料は両親に対するもので、3カ月半苦しんだ天聖に対するものではなかった。
出生前診断をめぐって起こされた裁判を通して、命の選別の是非を問うノンフィクション。
(文藝春秋 1700円+税)