「禁忌」主演、「欲動」監督…杉野希妃の華麗なるキャリア
開催中の京都国際映画祭で、国内外のカメラマンから最もフラッシュを浴びたひとりだ。
昨春の沖縄国際映画祭の最優秀ニュークリエイター賞受賞者にして、本映画祭で初監督作「マンガ肉と僕」の完成披露試写会が行われる杉野希妃。今月の釜山映画祭では今後のアジア映画を担う期待の星として「アジアスターアワーズ」新人監督賞を受賞、昨年の台北映画祭で特集が組まれ、エディンバラ映画祭などで審査員も務めたりと、海外で引っ張りだこのクリエーターである。
齢30にして、すでにキャリア10年目。女優として韓国の鬼才キム・ギドク監督「絶対の愛」などに出演、同時にプロデューサーもこなし、約20作品に携わってきた。
慶大経済学部出身の才女にして、ご覧(写真)の美女。東京国際映画祭では「アジア・インディーズのミューズ」と呼ばれた。さらに来月から、新宿武蔵野館で「禁忌」「欲動」と2作品連続で上映されるというから、すごい。もっとも、「いやあ、全然ですよ」とは本人。
「私、広島で育ったんですけど、両親が厳しくて抑圧を感じたというか、映画と演劇が現実逃避の手段だったんです。演劇は、演劇部で宝塚の男役の真似をして、駄目だと分かり、残るは映画しかない。でも、ひとと違うことをしたくても、得意なものがなにもない。大学を卒業するとき、中途半端な自分が嫌で、韓国に留学してオーディションを受けたのがはじまりなんです。そこで拾ってもらい、今なんとかやらせていただいていますが、自分から仕事をもぎ取っていかないといけない世界ですから、明日どうなるかわからない。常に恐怖感を抱え、毎日もう、死に物狂いです」
夢は国境、人種を超える普遍的な作品をつくること。頭をひねり、眉間にシワを寄せて質問の答えを探すところといい、純朴な素顔を見せてくれた。