青猫書房(赤羽)ロングセラーや詩集、猫の本の棚までぎっしり4000冊
赤羽駅から商店街を歩き、1足100円のソックスを売る店に感動し、その先の住宅街へ。絵本専門店「青猫書房」は、柔らかな日差しを浴びて立つ、白い建物の1階にあった。
「木造4階建てなんです。木造に力を入れている女性建築家に設計をお願いしました」と、店主の岩瀬惠子さん。
相続税対策でマンション経営が持ち上がっていた時期に、2~4階をアパートにし、その家賃収入で建設費を返せる算段をし、「地元・赤羽に文化的な場を」と計画。「建設中に猫が一匹、落ちてきた(笑)」ことから店名をつけ、2014年に開店したという。
猫のオブジェに迎えられ、店内に入ると、齋藤槙「かめかめたいそう」、中川李枝子「ISSUE 冒険のはじまり」、まど・みちお「ぞうのこバナ」などの面陳列に目がいく。名作目白押しだ。
キャラリースペースも併設して総合文化スペースの様相
カフェ、ギャラリースペースを含め30坪に約4000冊。
「ロングセラーや定番本を軸に、選書しています」
元々は港区に勤める公務員。区立図書館勤務だった70年代半ばに、「子どもにとってどの本がなぜいいのか」といった、連続専門研修を受けた。その経験がモノを言った。
とはいえ、長い人生、いろいろあった。のちに資格を取った測量士の仕事や病気のこと、高校の先輩である出版社「童話屋」社長が背中を押してくれた……と、開業以前の話は尽きないが、さて。
「懐かしい」と、岩波の子どもの本「はなのすきなうし」「九月姫とウグイス」を手に取ると、「私が生まれた頃に出版が始まったシリーズです。時代を経ても、心に響くでしょう?」と岩瀬さん。
谷川俊太郎や茨木のり子らの詩が収録された「ポケット詩集」のほか、安野光雅、大岡信らの詩集など、童話屋の本をまとめた棚がある。思わず「あそぶため うまれてきたのさ ぼくはねこ」や「CAT ART/名画に描かれた猫」に手が出た猫の本の棚もある。
もっと言うと、6月29日の「川口真由美さんコンサート」など、社会派イベントも随時開かれ、もはや、絵本店を軸にした総合文化スペースの様相を見せている。
◆北区赤羽2-28-8 TimberHouse1F/℡03.3901.4080/JR京浜東北線など赤羽駅北改札東口・地下鉄南北線赤羽岩淵駅1番出口から徒歩10分/午前11~午後7時(日曜午後5時まで)、10~3月は午前11~午後6時(同)/火曜休
ウチの推し本
「わすれていいから」大森裕子著
猫の名前も少年の名前も出てこず、猫の「おれ」が少年を「おまえ」と呼び、1人で語る物語だ。帯に「子どもの成長を応援する ある猫の物語」とある。
「著者の大森裕子さんの猫の絵は、勢いがあり、画面から飛び出してきそうな魅力があります」
特に、窓辺に並んで外を見る「おれ」と「おまえ」の後ろ姿シーンに心打たれる。大人にも真っ向から刺さる物語だ。
(KADOKAWA刊 1650円)