評論家も太鼓判押す 映画「猿の惑星:新世紀」大人の鑑賞法

公開日: 更新日:

「猿の惑星」(68年、米)といえば、自由の女神像のラストシーンの衝撃が忘れられないSF映画の古典。だがその内容は奥深く、公民権運動の真っただ中だった当時の米国社会の差別構造を暗喩しているといった、さまざまな解釈がなされる社会派としても評価が高い名作だ。

 現在公開中の映画「猿の惑星:新世紀(ライジング)」(131分、米)は、そんな名作のリブートとなる新シリーズ最新作。平凡なリメークや続編ばかりと揶揄される最近のハリウッド映画だが、「この新・猿の惑星シリーズの評価はすこぶる高く、しかもこの2作目は1作目よりよく出来ている」と太鼓判を押すのは映画批評家の前田有一氏だ。

 舞台は近未来のサンフランシスコ。ウイルスにより絶滅寸前の人間が、進化した猿たちと森で遭遇、一触即発となるストーリー。

 パッと見、リアルなCGと激しいアクションが売りの娯楽作だが、「旧作同様、裏テーマをはらんでおり大人も見ごたえ十分。具体的には猿と人間の物語、すなわち共存から対立、やがて破滅的な戦争に至る流れが、現実の人間社会の比喩となっている。米国とイスラム国、イスラエルとパレスチナ、あるいは日本と中国。今起きているどの国際紛争にも当てはまる“戦争の発生原理”を指摘する本作は、見栄えだけのSF大作ではありません。旧シリーズの社会派精神をしっかりと受け継いでいる。伝統的にハリウッドと政治の距離は近く、政権内部に参加する映画会社幹部すら存在してきました。本作のように時事性、社会性ゆたかな娯楽作品こそ、世界に冠たるハリウッド映画最大の強みといえるでしょう」(前田氏)。

 同作は口コミで評判が広がり、15億円を超える興収が見込まれている。思考が深まる秋の夜長におすすめの一作だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  2. 2

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  3. 3

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  4. 4

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  5. 5

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  1. 6

    大炎上中の維新「国保逃れ」を猪瀬直樹議員まさかの“絶賛” 政界関係者が激怒!

  2. 7

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  3. 8

    維新の「終わりの始まり」…自民批判できず党勢拡大も困難で薄れる存在意義 吉村&藤田の二頭政治いつまで?

  4. 9

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  5. 10

    SKY-HI「未成年アイドルを深夜に呼び出し」報道の波紋 “芸能界を健全に”の崇高理念が完全ブーメラン