「Red」が描く禁断の愛に溺れた女性の選択 三島監督に聞く

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 夏帆(28)主演の映画「Red」(日活配給)が21日、公開となる。原作は直木賞作家・島本理生の同名官能小説で、倫理観を超越する禁断の愛を描き、賛否を呼んだ。三島有紀子監督(50)は、なぜ本作をテーマとして選んだのか。

  ◇  ◇  ◇

 ――いつの時代になっても、"結婚"は気になるひとつのテーマだと思います。世間では、芸能人の結婚がトップニュースとして取り上げられます。

 取り上げているのはマスコミの皆さんだと思いますが(笑)、でも誰にとっても結婚はとても身近なテーマですよね? 私は個別のスタイルがもっと認められたらいいと考えます。例えば、夫婦別姓も同性婚もどちらがいいということではなく、まずは選択の自由。「家」よりも「個」としてのスタイルに寛容になっていけば、窮屈さは軽減されるのではないでしょうか。

 映画製作は、人間を研究し人間を描くものと捉えていますが、その背景である社会の出来事や世界で起こっている流れは敏感に汲み取るようにしています。「Red」では、ひとつのロマンスを通して、人が抱える複雑な葛藤を観客の皆さんと一緒に見つめられたらと考えています。
 
 ――主人公・塔子(夏帆)の「人生の選択」が印象的でした。原作とは異なる結末にした意図は?

 人は岐路に立ったときに誰もが悩みますよね。人間は失敗もするので、映画であるひとりの女性の人生を描くときに、その是非を問いたいとは思いません。本作では、それまで自分の欲求を押さえつけていた人が、たとえそれが世間では正しくない選択だとしても、すべてを捨てて自分に正直に生きようとする姿を鮮明に描きたかった。そうすることで、より力強くそれぞれの生き方を問う映画になると考え、あのラストにしました。

 彼女が本当の意味で自分の人生を生きられると考えた選択を見ていただき、観客の皆さまそれぞれの人生の選択を見つめていただける機会になれば、とそんな気持ちで作りました。

個人の生き方を尊重したい

 ――裕福な家庭で育った夫・真(間宮祥太朗)とのハイソサエティーな生活こそが「理想の結婚像」だと信じてやまない塔子。実際にその生活を手にし、不自由こそあれど不満はない生活を送る中で、突然、10年前に愛した鞍田(妻夫木聡)と再会。2人は禁断の愛に溺れていきます。

 塔子は自分の意志をうまく表現できない性格で、本当に欲しているものを自覚してこなかった女性です。自分が手に入れたかった暮らしだと思って真と結婚したのも、生い立ちの影響もあるでしょうが、世間に刷り込まれた価値観に流されていたところもある。ですが、結婚後に自分の居場所がここではないと気づいたとき、改めて自分の生き方を自問し始めます。そのきっかけとなるのが、自分の本質をよく見ている鞍田との再会なのです。

 ――専業主婦の塔子を通じて、現代に生きる女性特有の息苦しさがも可視化されていました。

 他者から見れば塔子は恵まれた環境ともいえますが、息苦しくないかといえば嘘になる。求められる妻や母の姿を一生懸命演じたり、価値観や文化が違う人と暮らすのは歪みが生まれて、ツラいもの。でも自分が我慢すればうまくいくと信じてきた。そうやって自分を押し殺し続けていると、「本当はどう生きたかったのか」ということが往々にして見えなくなってしまいがちです。

 一方で働く女性が、男性と同じように機会を得ているのかと言われたら疑問ですね。依然、決定権のあるポストは男性が握っていると感じることが多いです。個々人が発信していくと同時に、社会全体が変わっていかないと難しいでしょうね。

 ――結婚の倫理観についてはどう思いますか? 例えば、誰かを傷つける選択について。

 当たり前の話ですが、誰かを傷つける選択は正しいとは思いません。ですが、それぞれ、個々の事情はわかりませんし、非常に結婚は個人的なものですからね。当事者にしかわからないことだと考えています。それに、人間も失敗しますからね。AIじゃないので、いつも正しい選択ができるわけではないのかなと。どんな失敗も許さないといっていたら、人間が人間という生き物を否定してしまう事になると怖くなることがあります。

 私たち、映画製作という芸術に携わるものは、人間を描くのが仕事と捉えています。いろんな感情が積み重なって起こしてしまう人間の行動や機微を、これからも誠実に、深く掘り下げていきたいなと思います。

 ――塔子の選択にも関わってきますが、婚姻制度についてはどう考えますか。

 結婚も生き方も個人のスタイルが尊重されたらいいかなと。例えば、夫婦別姓。それが、いいかどうか個人の考え方によりますが、いろんなスタイルを選べる「自由」をまず手にしてみればいい。東京・渋谷区や世田谷区はじめ各地で同性パートナーシップ制度が導入され始めています。新しい結婚のスタイルを模索する時期に来ているのでは。きっと、見た後にそんな事も含めていろんな話をしていただける映画かなと思います。

 映画では、社会的な役割と自分らしい生き方について葛藤する塔子の姿が描かれるなど、三島監督のメッセージが込められている。ロマンスを感じながら「自分とは何者か」をあらためて考えるきっかけになる良作だ。

(聞き手=白井杏奈/日刊ゲンダイ)

▽みしま・ゆきこ 1969年、大阪府出身。NHK在籍中に「NHKスペシャル」などのドキュメンタリー作品を企画・監督。同退局後、映画監督として活躍。映画「幼な子われらに生まれ」(17年)が、第41回モントリオール世界映画祭審査員特別大賞、第42回報知映画賞、第41回山路ふみ子映画賞を受賞。

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