趣向を凝らす坂東玉三郎 異質ワンマンショーで見せた気骨
(作家・中川右介)
9月の歌舞伎座も4部制で、それぞれ1時間前後で1演目。どの役者が人気があるか、一目瞭然となる。初日と2日目に分けて行ったが、玉三郎ひとりが出る第4部が一番席は埋まっていた。
第1部は梅玉、松緑、錦之助らの「寿曽我対面」。
第2部が幸四郎と猿之助の「色彩間苅豆/かさね」。「かさね」は、昨年の巡業で2人で上演したもので、歌舞伎座で2人で演じるのは初めて。このコンビの当たり役になるかもしれない。
第3部は吉右衛門と菊之助の「双蝶々曲輪日記/引窓」で、秀山ゆかりの狂言と冠されている。例年なら9月は初代吉右衛門を顕彰する秀山祭だったなと、思い出す。
半分も埋まらず、掛け声もなく、客席は異常空間なのだが、第1部から第3部の舞台の上は、何事もなかったかのように、通常のままの歌舞伎だ。8月のように、主役俳優の放送での挨拶もない。普通に幕が開き、普通に劇は進み、普通に幕が閉まる。それはそれでひとつの見識というものだ。この状況下でも、歌舞伎は揺るがないとの意思表示でもあるのだろう。