著者のコラム一覧
辻野晃一郎アレックス株式会社代表取締役社長兼CEO

1984年に慶大大学院工学研究科を修了。ソニーを経て、グーグル日本法人代表取締役社長を務めた。2010年にアレックス株式会社を創業。現在は代表取締役社長兼CEO。著書多数。好評メルマガは<https://www.mag2.com/m/0001696868>、Xのアカウントは<https://x.com/ktsujino>。

かつて世界の最前線にいた日本は、なぜ取り残されたのか

公開日: 更新日:

 このたび、日刊ゲンダイさんからお声がけをいただき、隔週で、日本の産業、経済、企業などについて論じる連載コラムを執筆することになりました。どうぞよろしくお願い致します。

 今回は初回ということもあり、私自身の略歴を少し紹介させていただきます。私は長年、ビジネスの現場で活動してまいりました。キャリアのスタートはソニーで、その後グーグルに移り、のちに独立して起業しました。また、複数の企業で社外取締役を務め、大学の客員教授などの立場でも活動してきました。規制改革や地域振興といった分野では、国家行政や地方行政にアドバイザーとして関わった経験もあります。

 また、こうした実務経験を通じて得た知見や問題意識を、著作、メルマガ、SNS、講演などを通じて積極的に発信してきました。

 私が大学を卒業してソニーに入社した当初、日本は高度経済成長のさなかにありました。戦後復興を経て、家電、自動車、半導体などの分野で日本企業が世界市場を席巻し、「メード・イン・ジャパン」は高性能・高品質の代名詞として、世界中の人々を魅了しました。

 当時、日本は「科学技術立国」を標榜し、半導体は「産業のコメ」とも称されていました。大型コンピューター(メインフレーム)の市場でも、日本企業はIBMを脅かす存在となり、日本は科学技術先進国、貿易黒字国として、米国に次ぐ世界第2位の経済大国へと上り詰めました。

 しかし、1985年のプラザ合意による円高・ドル安の誘導、86年に始まる第1次・第2次日米半導体協定、88年のスーパー301条による対日制裁など、米国の政治的圧力をきっかけに風向きが変わり始めます。そして2000年代に入り、情報通信革命が本格化してインターネット時代に突入すると、日本の競争力の低下が顕著になりました。

 そしてウェブ2.0の時代になり、クラウドやソフトウエアが産業競争力の決め手となると、日本の立ち遅れはさらに顕在化し、「デジタル後進国」とも呼ばれるようになってしまいました。昨今では「デジタル赤字」がメディアでも頻繁に取り上げられますが、その規模は年々拡大しています。24年度には約6.7兆円に達し、このままでは10兆円を超えるのも時間の問題です。

 かつては世界の最前線で進化を牽引していた日本が、なぜ多くの産業分野で取り残される側に回ってしまったのか。その原因を解き明かすことは、これからの国家戦略を考える上でも非常に重要です。

 本連載では、日本凋落の要因、背景にある世界の変化、そして今後の進むべき方向性について、多角的な視点から考察していきたいと考えています。

【連載】デジタル後進国のグランドデザイン

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    8.31に「備蓄米販売リミット」が…進次郎農相は売れ残りにどう落とし前をつけるのか?

  2. 2

    庶民の食卓を“猛暑インフレ”が襲う…肉も野菜も卵も高騰で「政府による物価高対策を」と専門家が警鐘

  3. 3

    15%上乗せ「トランプ関税」発動で日本経済に壊滅的打撃…「石破おろし」に拍車どころか退陣の決定打に

  4. 4

    絶好調「コメリ」の拡大路線はいつまで続く? “農家のコンビニ”路線で第1四半期の営業利益は6%増

  5. 5

    トランプ大統領が労働統計局長に“おまえはクビ!” 米国の雇用悪化で高まる「スタグフレーション」リスク

  1. 6

    食い違う日米合意、「相互関税」も日本は特例対象外…トランプ関税は「持久戦」待ったなし

  2. 7

    元安倍派・豊田真由子氏が「羽鳥慎一モーニングショー」で暴露!“パー券販売”の驚愕実態にSNS震撼

  3. 8

    増産に転換で付きまとう“コメ余り”…対策として政府がブチ上げる国産米「輸出拡大」の勝算は?

  4. 9

    米価高騰「流通悪玉論」は真っ赤なウソだった! コメ不足を招いた農水省“見込み違い”の大罪

  5. 10

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  2. 2

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 3

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  4. 4

    市船橋(千葉)海上監督に聞く「高校完全無償化で公立校の受難はますます加速しませんか?」

  5. 5

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  1. 6

    プロ志望の健大高崎・佐藤龍月が左肘手術経てカムバック「下位指名でものし上がる覚悟」

  2. 7

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  3. 8

    石破首相が「企業・団体献金」見直しで豹変したウラ…独断で立憲との協議に自民党内から反発

  4. 9

    長渕剛がイベント会社に破産申し立て…相次ぐ不運とトラブル相手の元女優アカウント削除で心配な近況

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希“ゴリ押し”ローテ復帰が生む火種…弾き出される投手は堪ったもんじゃない