岸部四郎さんは「お酒を飲む人もカラオケも全部嫌い」と
「お酒の話を聞かせてください」
8月に亡くなっていたことが明らかになった岸部四郎さんの元を本紙(日刊ゲンダイ)記者が訪ねたのは2008年夏のこと(取材時は「岸部シロー」)。同年、連載がスタートした「涙と笑いの私の酒人生」のインタビューだった。ところが、開口一番、「僕、酒は飲まないんだよ」。その一言に記者はガーン!「どうしようかと思った」と冷や汗。何を聞こうとアタフタしながらも、記者魂で食らいつき、なんとか時間いっぱい取材を行ったという。終了後、「飲まないって言ってます」と連絡してきた記者の泣きそうな声を今も覚えている。
「『酒人生』の取材を受けたのに、飲まないと言う人は初めてのケースだけど、そう書くしかないよね」。あがってきた原稿は岸部四郎らしいひょうひょうとして投げやり、人をけむに巻くようで、含蓄もある、嫌みな仙人のような言葉が並んでいた。
酒飲みのことは「そもそも酒を飲む人は好きじゃない」と語り、「酒もたばこも、自分から飲もうと思ったことは一回もないんじゃないかな」「カラオケも嫌いだし、ウーロン茶ばっかり」。