「筆と槍」佐藤巖太郎著

公開日: 更新日:

「筆と槍」佐藤巖太郎著

 物語は奥羽の地で齢80の和久宗是が、伊達政宗の重臣、伊達成実から「殿の事績を書き表してほしい」と頼まれる場面から始まる。

 三好長慶に仕えていた槍使いの和久又兵衛(宗是)は、跡を継いだ若き君主・義継が織田に逆らう立場を取ることを巡り、対立。信長に和議申し込みを命じられた又兵衛は、義継の奸計によって信長の逆鱗に触れるも、秀吉に命を救われる。三好家を見限った又兵衛は、秀吉に三好家調略の策を授けた功で、取次・交渉を担う「右筆」の宗是として信長の下で働くことになった。

 武から文へ。天下人を支える宗是の君主は、やがて信長から秀吉へ移る。そんな宗是に奥羽の雄伊達家を臣従させる役目がまわってくる。筆を執り、伊達政宗の元まで出向いた宗是は、若き政宗の豪胆さに驚く--。

 織田信長、豊臣秀吉、伊達政宗の3人の英傑に仕え、生き抜いた「交渉人」の視点で描いた歴史小説。知略と筆で説得し、人を結び付けていく腕はもちろんながら、厳しさの中にも温かみのある宗是の人柄が魅力的だ。

 天下人とは、誰に支えられるかが大きいと改めて思わせる、戦国乱世の舞台裏にページを繰る手が止まらない。(PHP研究所 3080円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相「嘘つき政治家人生」のルーツを発掘! 34年前に自ら堂々と「経歴詐称」を認めていた

  2. 2

    【スクープ第3弾!】衆院選での違法な「有料広告動画」疑惑 宮城自民5陣営“総汚染”で組織ぐるみが浮き彫り

  3. 3

    サバンナ高橋“10年いじめ”問題からにじむ上下関係の悪しき伝統と「吉本の闇」…鬼越トマホーク良ちゃんも参戦

  4. 4

    「投手の墓場」で好投する菅野智之の価値 僕が日本人史上2人目の本塁打を打ったのもクアーズフィールド

  5. 5

    巨人・戸郷翔征トレード獲得に他球団が虎視眈々 「ウチなら再生できる」「環境を変えた方がいい」

  1. 6

    犯人探しはまだまだ続く? 中山功太案件“解決”で強まる「パンサー尾形の件は誰なの?」の疑問

  2. 7

    細木数子と闘った作家・溝口敦氏は『地獄に堕ちるわよ』をどう見たか? “女ヤクザ”の手口と正体

  3. 8

    パンサー尾形や中山功太の告発…お笑い業界の“いじめ体質”はなぜ消えない? ヤンキー文化が残した功罪

  4. 9

    井上一樹氏は今季限りでクビか? 最下位中日で早くもウワサ…次期監督は「井端弘和vs荒木雅博」の一騎打ち

  5. 10

    波瑠&高杉真宙「夫婦格差」新婚5カ月でクッキリ…妻は株上昇も、夫は視聴率低迷の切ない事情