「筆と槍」佐藤巖太郎著

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「筆と槍」佐藤巖太郎著

 物語は奥羽の地で齢80の和久宗是が、伊達政宗の重臣、伊達成実から「殿の事績を書き表してほしい」と頼まれる場面から始まる。

 三好長慶に仕えていた槍使いの和久又兵衛(宗是)は、跡を継いだ若き君主・義継が織田に逆らう立場を取ることを巡り、対立。信長に和議申し込みを命じられた又兵衛は、義継の奸計によって信長の逆鱗に触れるも、秀吉に命を救われる。三好家を見限った又兵衛は、秀吉に三好家調略の策を授けた功で、取次・交渉を担う「右筆」の宗是として信長の下で働くことになった。

 武から文へ。天下人を支える宗是の君主は、やがて信長から秀吉へ移る。そんな宗是に奥羽の雄伊達家を臣従させる役目がまわってくる。筆を執り、伊達政宗の元まで出向いた宗是は、若き政宗の豪胆さに驚く--。

 織田信長、豊臣秀吉、伊達政宗の3人の英傑に仕え、生き抜いた「交渉人」の視点で描いた歴史小説。知略と筆で説得し、人を結び付けていく腕はもちろんながら、厳しさの中にも温かみのある宗是の人柄が魅力的だ。

 天下人とは、誰に支えられるかが大きいと改めて思わせる、戦国乱世の舞台裏にページを繰る手が止まらない。(PHP研究所 3080円)

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