著者のコラム一覧
一雫ライオン作家

1973年、東京都出身。明治大学政治経済学部2部中退。俳優としての活動を経て、演劇ユニット「東京深夜舞台」を結成後、脚本家に。数多くの作品の脚本を担当後、2017年に「ダー・天使」で小説家デビュー。21年に刊行した「二人の嘘」が話題となりベストセラーに。著書に「スノーマン」「流氷の果て」などがある。

彼は神が間違いを犯さないかぎり物書きにはなれないだろう

公開日: 更新日:

 作家になりたいという大学3年生の青年とメールでやりとりするようになり、改めてため息をついた。彼は小説を3本書きためているという。きけば十分に出版社の応募要項に足りる枚数の小説を書いている。つまりなんらかの賞を得られ、デビューできるチャンスはあるのだ。が、青年はどの出版社にも応募していないという。Y編集者に尋ねると「落選するのは嫌だし時間の無駄なので、その意味でもアドバイスが欲しい」と言っているという。

 またため息をつく。「いけ好かないガキゃぁ」なんて呟いてもみる。恐らく青年は九分九厘、神が間違いを犯さないかぎり物書きにはなれないだろう。なぜなら若くしてデビューする作家さんのほとんどが賞を受賞して世に出ているからだ。その多くの本は身震いするほど力強い。若さゆえの感受性というやつを、これでもかとばかりに叩きつけてくる。要は「書かずにはいられないなにか」を持ち、解き放ったから誰か一人の目に留まったのだ。でも青年は「落選するのはイヤン」「時間の無駄もイヤン」とイヤンイヤンばかりである。それでは悪魔は手を差し伸べてはくれない。かつてのわたしがそうだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋