日本の皇室の発信力の弱さはつまるところ、話が面白くないから…変えないとSNSも逆効果

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 来年4月から日本の皇室も、英王室のようにSNSを使って情報を発信するという。発信力の弱さを前々から批判されてきたからだ。ただ、SNSは確かに国民との距離を縮めるだろうが、コントロールがむずかしい。8月末にSNSの活用が宮内庁から発表された当時、皇室記者はこんな感想を述べている。

「眞子さんや紀子さまのことがいろいろ書かれて、一歩間違うと天皇陛下への批判も出るんじゃないかと、側近は強い危機感を持っています。それでSNSを始めるのですが、イギリス王室をお手本にするのか、これまでのように週刊誌など雑誌に対する抗議を流すのか、ふたを開けてみないと分かりません。基本的には、誤った情報が流れているので正確な情報を発信したいということでしょう。ただ、陛下の執務時のワンショットを出すなど、親しみやすいサイトにするなら国民の目も違ってくると思いますが、文句や訂正ばっかり言ってたら皇室は見放されるでしょうね」

 間違った報道を正したいのは理解できるが、ささいなことに目くじらを立てていても、国民には理解してもらえない。宮内庁職員の中には、いくら情報を発信しても伝わってこなかったと嘆く声があるそうだが、伝え方が間違ってはいないだろうか。正確さだけでは国民の関心を引かない。

 皇室のSNSを宮内庁から独立させず、あくまで宮内庁のHP内に設定することになれば、しょせん、国民は宮内庁のPRとしか思わないだろう。

 それ以上に問題がある。英王室の王族は400~600もの団体のパトロン(名誉会長や総裁など)になっているから書き込むことはいくらでもあるが、日本の皇族は少なく、書き込む公務がなければ「何もしていない」「遊んでいる」というイメージを与えかねない。

 日本では天皇ご一家や秋篠宮家が誕生日などに合わせて記者会見を開いたり文書で回答したりするが、英王室ではこうした慣例がない。日本の宮内庁長官が定例会見するような王室関係者の会見もないそうだ。

 それでも日本の皇室の発信力が弱いといわれるのはなぜか。答えは簡単だ。せっかく発信しても、ありていに言えば内容が無難な表現ばかりだから面白くない。新聞も取り上げないし、国民も興味を持たない。秋篠宮さまの会見もそうだ。1時間語られても、「眞子さんの乱」でもなければ新聞に載るのは数行。だからといって、宮内庁のHPで全文を読む読者はまれだろう。

「英王室の場合は、エリザベス女王が自らツイッターでつぶやいたり、エリザベス女王が大笑いしている動画もありました。もちろん音声ありです。宮内庁がSNSを仕切って同じように発信できるかというと、宮内庁官僚の頭の中を百八十度変えないと無理でしょうね。それぐらいの改革ができるかどうかです」(皇室記者)

 相手に伝わる情報量は、SNSよりも言葉で語りかけるほうがはるかに多い。記者会見の場などを通して、まずは何をどういう言葉で伝えるのがベストなのか、そこから改革していくことが先決なのではないか。

 SNSで怖いのは、「眞子さんの乱」で宮内庁の電話が鳴りやまなかったように、それ以上の“炎上”もあり得ることだろう。ネットのニュースで紹介されると、そこに匿名のユーザーが日常の不満をぶつける。ネットに書き込まれたコメントを読むと、普段は皇室のことに興味のない人たちが、眞子さんに対し、まるで見知らぬタレントに罵詈雑言を浴びせるかのように書き込んでいることがわかる。

 一歩間違えば炎上して「事故」になりかねないSNSは、記者会見を補完する役割で十分ではないだろうか。記者会見などで情報発信力をいかに高めるか。宮内庁はそこに知恵を絞るべきだと思う。 (つづく)


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