松尾潔
著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

『白鍵と黒鍵の間に』の濃厚なジャズ的リアリティ。そして「博」と「南」の間に…

公開日: 更新日:

 ジャズを題材にした映画はとかく賛否が分かれやすいものだ。

 例えば、2015年に日本公開されて評判をとったデイミアン・チャゼル監督の『セッション』。この映画をめぐっては、ジャズミュージシャン・文筆家の菊地成孔と映画評論家・脚本家の町山智浩の間にはげしい論争が起こった。菊地さんは「ジャズ屋」としての体感から音楽的リアリティの希薄さを指摘し、また内容も凡庸と断罪。一方、TBSラジオの番組で同作を「バトル映画」として絶賛した町山さんには、アメリカ在住の視点で映画と社会を観察し続ける絶対的な強みがあった。両者に共感を覚えたぼくは、でもこれって矛盾しないなぁと妙に納得した記憶がある。だからジャズ映画はおもしろい、とも。

 ジャズピアニスト南博の同名回想録が原作の冨永昌敬監督の新作『白鍵と黒鍵の間に』を観ながら、ぼくがずっと反芻していたのは、そんなジャズ映画をめぐるあれこれだった。一定期間以上ジャズを聴き続けてきた人にはその名を知られる四谷の老舗ジャズ喫茶「いーぐる」で、日芸の映画学科在学中から計12年もバイトを続けた経歴をもつ冨永監督。ゆえに今作のジャズ的リアリティは濃厚である、とまず言いきっておこう。かれこれ四半世紀も前に、ぼくのプロデュース楽曲で南さんに圧巻のピアノソロを弾いてもらったことを懐かしく思いだしながら観た。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  3. 3
    無垢で可愛かったのに…元有名子役・若山耀人逮捕の衝撃! NHK大河「軍師官兵衛」にも出演

    無垢で可愛かったのに…元有名子役・若山耀人逮捕の衝撃! NHK大河「軍師官兵衛」にも出演

  4. 4
    岸田首相含め政務三役31人、渡航費用12.6億円!円安放置し“血税ごっつぁん”外遊三昧のア然【リスト付き】

    岸田首相含め政務三役31人、渡航費用12.6億円!円安放置し“血税ごっつぁん”外遊三昧のア然【リスト付き】

  5. 5
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  1. 6
    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

  2. 7
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  3. 8
    仲野太賀に注目!NHK朝ドラ「虎に翼」で寅子と結婚…そして、もうすぐ“優三ロス”が起こる

    仲野太賀に注目!NHK朝ドラ「虎に翼」で寅子と結婚…そして、もうすぐ“優三ロス”が起こる

  4. 9
    若林志穂さん「Nさん、早く捕まってください」と悲痛な叫び…直前に配信された対談動画に反応

    若林志穂さん「Nさん、早く捕まってください」と悲痛な叫び…直前に配信された対談動画に反応

  5. 10
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前