著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

『白鍵と黒鍵の間に』の濃厚なジャズ的リアリティ。そして「博」と「南」の間に…

公開日: 更新日:

 主人公のジャズピアニストを演じる池松壮亮が自ら挑んだ演奏シーンは、すでに鬼才扱いされている彼の名声をさらに高め、のちのちまでの語り種となるはずだ。南さんを知る人はみな本人の物腰が憑依したようだと舌を巻く。アメリカ人シンガー役クリスタル・ケイのクールな歌唱シーンも、彼女を何度かプロデュースしたぼくが観ても十分に満足を覚えるものだし、天才の誉れ高い20代サックス奏者・松丸契の出演など、ジャズの予備知識の有無を問わず楽しめる見どころ聴きどころは多い。さらに最後には南さん本人のピアノ演奏曲まで聴くことができる。

 だが作品としての評価はまた別。監督が施した仕掛けはけっして万人受けを狙ったものではなく、結構な本数を観た映画ファンの高いリテラシーを信じて作った印象を受ける。というのは、監督と高橋知由による共同脚本では南博さんがモデルの主人公を2人に分けているのだ。映画的な奇想、というべきか。舞台はバブル景気に沸く1988年暮れの銀座。ジャズピアニストを目指すウブな若者の「博」と、それから3年経って夜の世界に染まった「南」。両キャラクターを池松がひとりで演じ分けることで、2つの時間を一夜のなかで描こうという大胆な試みだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    長瀬智也が国分太一の会見めぐりSNSに“意味深”投稿連発…芸能界への未練と役者復帰の“匂わせ”

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  3. 8

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  4. 9

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  5. 10

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…