俳優・堀内正美さんは「がんばろう!!神戸」の発案者 阪神・淡路大震災から30年の「思い」とは…

公開日: 更新日:

学生運動に挫折したことが人生の転機に

 さて、堀内さんは東京生まれ。父は教育映画の監督として知られる堀内甲。小学生の時に父の本棚にあった土門拳の写真集「筑豊のこどもたち」を見て社会の格差や矛盾を感じた。高校時代に全共闘運動に飛び込みデモの日々。浪人時代には坂本龍一もメンバーの一人だった「全都浪人共闘会議」を結成し、桐朋学園大学に進学しても三里塚闘争に参加した。しかし、地元の農民から「あんたらはいいなぁ……帰るところがあって。わしら、帰るところないから」という言葉に打ちのめされ、実生活に根ざさない自分の運動に挫折。演出家の蜷川幸雄に誘われて舞台の演出助手になった。

 そんなある日、TBSのプロデューサーにスカウトされる。それがデビュー作「わが愛」で、加藤剛の弟役だった。NHKの朝ドラ「鳩子の海」ではヒロインの相手役を演じて一躍全国区人気に。

 だが、84年に突然、神戸に移住した。

「元々、役者になるつもりはなかったし、若い頃は社会を変えようと学生運動をしていたのに、結局挫折して芸能界でそこそこ稼いでいることにどこか負い目があったのかもしれません。ボランティア活動に立ち上がったのは、若い時の情熱がよみがえったのでしょう。ただ、胸を張って言えるのは、活動に公的な補助金は一切もらっていないということ。逆に持ち出しが多く、薬局経営者だったからできた活動だったともいえます。ページ数の関係で本に書ききれなかったことのひとつは、行政に任せきりではいけないということ。自分たちの命は自分たちで守る。そのために人と人の結びつきが大事なんです。震災で途方に暮れている人たちに周りの地域からたくさんのおむすびが届けられた。おむすびは人々が支え合う『結びつき』の象徴でもあるんです。私が朝ドラ『おむすび』に出たのもその意味で必然ですね」

 17日に文化放送の震災30年特別番組に出演する。

(取材・文=山田勝仁)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃