【現地ルポ】SIONと往年のロッカーが「ファイナル」ライブで野音に別れを告げた夜
語り継がれる伝説は新たな1ページへ……
雲が白い線をひいていた空は刻々と色を変え、夜になると眩い照明が闇を切り裂き、暴れまわる。やがてステージと客席が一体となって、宙に浮いたような浮遊感がボルテージに拍車をかける。そんなライブに通い続けてきたファンにとっての野音は自分の立ち位置を確認する拠点であり、道しるべであり、生存を確認し合う場所としても機能している。どしゃ降りの雨と風の中、アンコールまで歌い切った回もあれば、直前までの大雨警報がうそのように晴れ渡った回もあった。
「寒さ、暑さが結構応えるようになりました。へへへ」
そんな軽口も叩きつつ、SIONは「たのしいな」と呼び掛け、会場を盛り上げた。そんなSIONの野音も今回「FINAL」と銘打たれた。キャロルの解散コンサートがあり、キャンディーズの3人が「普通の女の子に戻りたい」と叫び、尾崎豊が7メートルの照明設備から飛び降りたステージでSIONはラスト、「バラ色の夢に浸る」を歌い出した。
♪働かなくちゃ、生きていけないが、楽しみがなくちゃ、何が人生だ!
そしてファンとともにまた野音の空を見上げた。
♪見上げれば、着飾ったビルの、遥か上、不動の光で、大好きな月が輝く~
100余年の歴史に幕を閉じるが、ロックの殿堂、音楽の聖地の伝説に終わりはない。
(長昭彦/日刊ゲンダイ)