著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

【大阪弁護士会】石田法子会長と沢田研二の2015年新春対談の「読みごたえ」

公開日: 更新日:

 あまたある沢田研二のインタビューの中でも、もっとも読みごたえのあるものの1つだろう。

 媒体は何と「月刊 大阪弁護士会」。その2015年1月号に、沢田研二と石田法子大阪弁護士会会長による「新春対談」が載っているのだ。これがすごい。そもそも出だしからして、なかなかすごい。

 ──私は、タイガースとしてデビューされる前、沢田さんがファニーズという名前で大阪・なんば一番で歌っていた時からのファンで、あちこちでそれを言っていたところ、関東圏の先輩弁護士からのご紹介で、沢田さんが良く行かれるお寿司屋さんで、沢田さんとの対談が実現しました。

 大阪弁護士会、ファニーズ、ナンバ一番、沢田さんが良く行かれるお寿司屋さん……。もうこの段階で、普通のインタビューではない釣果が期待されるではないか。全編、必読エピソード満載なのだが、個人的には、これが気に入った。

 ──タイガースが終わってPYGというグループでやっているころに、京大の結構左翼的な人たちから「おもろいやん」みたいなことで声かけられて、自分たちの機関誌にちょっと何か書いてくれと言われて、「えーっ」とも思っていたんですが、よし書くぞと思ったときに、今度は一緒にやっていた井上堯之さんから、「研二、おまえの名前で俺が書くから」といわれて、「えっ、それ違うんじゃないの?」と思いました。

 要するに井上堯之は「沢田研二」名義で政治的発言が発せられることを、自ら防ごうとしたのである。この件に対する心象を、沢田研二が実に正直に語っている。ちょっとほほ笑ましい。

 ──そのころ井上堯之さんは、僕のことをそういうことを考えるべきじゃないと思ったのか、似合わないと思ったのかは知らんけど、あほはあほなりに何か言わせてくれたらええやんという思いもあった一方、どこかで胸をなでおろすところがあって、真面目なところに一歩足を入れようとしていたのに入れんで済んだわけです。

「あほはあほなりに何か言わせてくれたらええやん」とは、今でも、沢田研二という人の心情に残っている気持ちのように思う。あと、石田氏が「でも反原発ということは、スポンサーとかの関係で勇気がいったのでは?」という質問に対して、こう赤裸々に答える。

 ──僕、大阪でやる音楽劇は関西テレビがずっとサポートしてくれてたんですよ。でも(註:反原発発言を、ということか)やめてくれと言って、自力でやろうと思いました。

 ──これはあかんやろうということ、原発稼働反対というのはニュースでは出すけど番組で誰も言えないというのはおかしい。どことも一切しがらみをなくさないと物が言えなくなるというのが僕の主義で、事務所の人間はそんなこと言わなくてもと思っているかもしれないけど、僕はどんどん小さくなっていいねん。発展するだけがあれじゃないし、ましてや、僕なんか一代だけと思ってるから。

「どことも一切しがらみをなくさないと物が言えなくなる」「僕なんか一代だけ」。沢田研二の鋭い発言にこういう感想もどうかと思うが──かっこいい……。

 あまり引用が過ぎると、相手は弁護士だ、訴えられるかもしれないので、最後に1つだけ。石田会長が「若手(弁護士)にエール」をというお願いに対して、沢田研二はこう答えている。

 ──僕が思うのは、いい仕事が来る前にしょうもない仕事に走ってしまう人が何に限らず多いんです。僕らの世界でもそうなんですけれども、せっかくそこまで待ったんやったら、この仕事やらんでええやろうと思う仕事をやっている人がいたりするんですね。待つということは、とても大変なことだけど大事だと思うんですよ。

 なるほど。そうだったのか。そして自分の「しょうもない仕事」に走ってしまった人生を悔いる。いやいや、待ったからこそ、沢田研二を書くという仕事に出会えたのか!

 とにかく内容たっぷり、迫力たっぷりのインタビューなので、ご興味のある向きは、全文を読まれたい。ありがたいことに、大阪弁護士会のホームページにまだアップされ続けている。

 月刊 大阪弁護士会『カッコイイ ジュリーから格好いい沢田研二へ』(注:PDF形式)

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