著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

長谷川京子と戸田菜穂が人妻女優対決『ふれなばおちん』は不倫を「女性の自己回復」として描いた佳作

公開日: 更新日:

 今からちょうど10年前の2016年7月、長谷川京子主演「ふれなばおちん」(NHK BS)が放送されていた。原作は小田ゆうあの同名漫画だ。主人公の上条夏(長谷川)は、夫(鶴見辰吾)と2人の子供と暮らす、ごく普通の主婦。「いくつになっても女とか、それは雑誌やテレビの中のお話。誰かを好きになるなんて、もってのほか」。そう思っていた彼女が「でも、好きな人ができました」という事態に陥ってしまう物語だった。

 長谷川は、かつてファッション雑誌のモデルとして若い女性の支持を集め、その人気ぶりが「ハセキョー現象」といわれた。そんな彼女も放送時は30代後半。実際に2児の母となり、堂々の人妻女優となっていた。

 夏は家族と一緒に社宅で暮らしている。自分のことよりも家族を最優先する毎日だ。中学生の娘(山口まゆ)から、「お母さんて、それでも女?」などと叱られたりするが、平穏な人生だった。

 ところが、同じ社宅に住む夫の同僚の妻が若い男と駆け落ちしてしまう。それをきっかけに夏の気持ちが揺れ始めた。さらに、隣に引っ越してきた夫の部下である青年(成田凌)が、忘れかけていた恋心に火をつける。「母だって、妻だって、女なんです!」なんて言われたら、多くの夫たちは沈黙するしかない。

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