著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

エンタメだけではなくビジネスマンにも!「なぜあなたの感想はふつうなのか」大島育宙著

公開日: 更新日:

「なぜあなたの感想はふつうなのか」大島育宙著

 この連載も早いもので36回。ただの本好き芸人の自分がこうやって書評の連載が出来ているのは実は本著を書いた大島育宙氏のおかげなのである。彼はタイタン所属のお笑いコンビ「XXCLUB」のメンバーであり、芸歴は私の10年後輩に当たる。東京大学出身という芸人の中でかなり稀有な武器でTVに出始め、またかなり早い段階で個人のYouTubeチャンネルを開設し、エンタメについて語る動画が大バズリしてコンテンツ全部見東大生という肩書でお笑い以外のシーンでも活躍するようになる。近年のドラマ、映画の考察ブームの立役者のひとりと言って過言ではない(制作サイドからもオフィシャルで彼の名前が出たこともあるため)。

 彼とライブで一緒になった際の打ち上げで、当時私は「ブログで週2回、読んだ書籍の感想を上げてるんだ」と話すと、真剣な顔でこう返してくれた。「カモシダさんそれもっと立てた方がいいですよ、あと“感想”じゃなくてしっかりとした“書評”も書けたら絶対良いです」。彼の言う通り今までとは違う責任ある文章を書こうと心がけた結果、この連載や文庫解説をやらせてもらえるようになった。大恩人だ。

 本著はそんな大島氏の初単著であり、まさに「感想」についての一冊だ。昨今はSNSや動画サイトなど感想自体が可視化されていることによって、他人を意識する人が格段に増えてきた。大島氏はそんな今の時代でいかに「自分の切り口で、クリティカルに響く感想」が出せるようになるかを優しく説いている。

 そう、優しいのだ。タイトルがこちらに問いかけてる分読んだら否定されるのかな? と思いきや、むしろ読んでるこちら側の長所を引き出そうとしてくれる。本著の中でも語られてるが彼自身が学生時代の青春ど真ん中に、あるラジオの映画批評コーナーに出合っていたからこそ、感想、批評への熱い思いが丁寧に組み込まれている。

 彼はバズりたいだけの若者ではない。批評はエンタメだけではなく政治にも及ぶ。この時代に必要な揺るがない意思を世界に届けようとする論者なのだ。だからこそ、エンタメ好きだけではなくビジネスにおけるプレゼンや言語化自体に興味がある人たちにも届いてほしい。

(大和書房 1650円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    日本の課題がわかる「リチウム戦争」アーネスト・シェイダー著/ニューズピックス(選者:佐藤優)

  2. 2

    天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

  3. 3

    天皇と戦争の世紀(2)軍部の「大権干犯に当たらず」の説明に苛立ち

  4. 4

    皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン

  5. 5

    「埋もれてきたもうひとつの抑留の真実と、日本政府の冷淡を知ってもらいたい」──「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」井手裕彦氏

  1. 6

    天皇と戦争の世紀(3)無条件降伏の後、日本側が天皇制をどう死守したのか

  2. 7

    「いのち、見つめて」夏川草介、渡辺淳一ほか著|看取りの真意を問いかける傑作医療小説集

  3. 8

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(2)「能面検事の挫折」中山七里著

  4. 9

    よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編

  5. 10

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(3)「『石球城』殺人事件」北山猛邦著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰