「シークレット・メロディ」若かりし日の恋の疼きが蘇るファンタジー

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巧妙かつダイナミックな脚本で観客を引き込む

 幼少のみぎりから天才ピアニストと賞賛された大学生が、周囲を魅了する演奏を披露しつつ物語を進める音楽映画。一種のミュージカルとも言えるだろう。筆者のような「ネコ踏んじゃった」も弾けないピアノ音痴は、卓越した演奏技術を見るだけで映像と音響に圧倒されてしまう。

 大学の教室で突然目の前に現れた美女ジョンアに、主人公のユジュンは一目惚れする。キャンパスでたびたび出くわし、一緒の時間を楽しむ間柄になるのだが、ユジュンは彼女がどこに住み、どんな境遇の少女なのかもわからない。

 観客は主人公のもどかしさを共有。ジョンアの正体は何者なのかと思案しつつファンタジックな物語にぐいぐいと引き込まれてしまう。巧妙にしてダイナミックな脚本だ。

 ヒロインが可愛い。ジョンアはいつもニコニコ微笑みかけるが、その反面どこか憂いを秘めている。そして寂しげに去っていく。

 最初はそれほどの美人と思わなかったが、物語が進むうちに演じるウォン・ジナの表情が一輪の野菊のように可憐に迫ってくるから不思議だ。筆者などは「あれ、彼女によく似てるなぁ」と10代のころの初恋の恋人の顔を思い浮かべてしまった。

 ちなみにウォン・ジナは1991年生まれ。なんと現在34歳である。いやはや見た目が若い。というか、若すぎるよ~!

 かくして若い恋人たちは別れという宿命に直面する。その先にある両者の決断とは……。

 不可思議な運命の結末は劇場のスクリーンで確かめてほしい。同時に大人の観客に、かつての甘酸っぱい胸のうずきを蘇らせてもらいたいと思うのだ。 (配給=クロックワークス)

(文=森田健司)

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