三谷幸喜作・演出の新作「歌舞伎絶対続魂」 狙い通りに客席は笑いっぱなしだが…
三谷自身が現代を舞台にして書いたバックステージものを、江戸時代に移し替えた、自作の改作。伊勢の芝居小屋が舞台で、「義経千本桜」を上演しているのだが、幕が開く直前からアクシデントやトラブルが続出。それでも幕は開くが、その後も、アクシデントが続く。
「観客を笑わせる」と三谷や主役の松本幸四郎が宣言していたが、その狙い通り、客席は笑いっぱなしである。しかし、その「笑い」の大半は、幸四郎が変な声を出したり、中村獅童が変な顔をするからで、それも「芸」のうちといえばそうなのだろうが、低級な笑いが多い。
頻出するアクシデントやトラブルも現実離れしており、「笑い」のための作為が見え見えで興ざめするし、身体的欠陥をネタにするものなど趣味がいいとは言えない。
群集劇なので登場人物は多いが、そのなかでドタバタに陥らず、喜劇としてしっかり演じているのは、中村鴈治郎と片岡愛之助、市川染五郎で、彼らのおかげで、見られるものとなっている。さらに、中村鶴松がいちばんまともな人物をまともに演じており、結果として、この芝居全体を支えている。
(作家・中川右介)


















