(1)「大体お前さんも俺も一匹狼なんだ…あばよ、さよなら、談志師匠」石原慎太郎は弔辞をこう結んだ
「俺さまは立川談志だ。落語とは俺だ!」
この厄介な男の登場で落語界は揺れに揺れ、おかげで“落語”は“能”になることを免れた。伝統に依存せず、破壊と再生に身を削った噺家、立川談志。その荒々しく生々しい戦いの軌跡を追う、渾身のノンフィクションがスタート。
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立川談志、七十五歳没。いまだに胸がざわつくような印象を残す落語家である。ぐいっと人を引き寄せ、同時にその強い磁力で人を壊しかねない危うさがこの男にはあった──。
談志のお別れ会が催された二〇一一年十二月二十一日、弔辞を読んだのは東京都知事の石原慎太郎である。
「私は今の仕事をとっくに辞めるつもりでいたんだけれども、諸般の事情でまた、四度目の東京の家元を務めてる。大体お前さんも俺も一匹狼なんだから家元なんかやるこたねえんだ。一人で真っすぐ傍若無人に生きていけばいいと思ったんだけど、あなたが家元になって、私もからかったりしたな」
「まあ長々話すのはやめますがね、あの世でいつかまた会えるんだろうから。それまで死んでも元気でいてくれ」
「あばよ、さよなら、談志師匠」(「談志が死んだ」立川談四楼)
都知事の登場は談志のステータスを物語る場面ではあったが、石原の弔辞は誠実で、かつ正直だった。タフガイを演じる者同士の孤独、老いを自覚しつつ得難い悪友を失う寂しさ──石原はそこを隠さなかった。かつてふたりの会話を何度か垣間見た自分にはそう思えた。
石原はさっそうと会場を去り、静かで、わずかに物悲しい余韻を残した。


















