アベノミクスの嘘を暴いた弁護士「安倍首相は思考停止」
アベノミクスのインチキについては、日刊ゲンダイも何度も指摘してきたが、ついに決定版ともいうべき本が出た。「アベノミクスによろしく」の著者の明石順平氏は、経済学者ではなく労働問題が専門の弁護士。公表されているデータを基に安倍政権の嘘を暴き、アベノミクスの恐ろしい実態、日本経済の絶望的な未来を畳み掛けるような筆致でえぐったのである。筆者が「調べていくうちに戦慄した」という犯罪的国民騙しの全容――。
■日本経済は減速したら爆発する暴走バス
――日本経済の現状をひと言で言うと、どんな感じになりますか?
1億総活躍とか言っていますが、このままだと1億総玉砕です。
――多くの人はアベノミクスで経済は好転しているように感じていますが、違う?
とんでもない誤解ですよ。日銀の黒田総裁はよく正気を保てるものだと思います。もう大失敗は歴然なのですから。私が彼の立場なら発狂していると思います。
――日銀が国債を買いまくってマネタリーベースを増やしても、マネーストックが大して増えていないということですね。マネタリーベースの対名目GDP比率は既に80%を優に超えている。比率で見れば米国の4倍を超えているとご著書(「アベノミクスによろしく」集英社インターナショナル新書)で指摘していました。その米国は緩和をやめたのに、日本はやめられないままです。
異次元の金融緩和の前後で、マネーストックの増加ペースに変化はありませんでした。資金需要がなかったということです。インフレ目標を達成できないのはそれが原因です。もう異次元の金融緩和という言葉を使うのをやめて、「脱法借金」と呼ぶべきでしょう。新規国債は全部、いったん民間金融機関に買わせた上で日銀が買っているのですから。これは財政法5条の脱法行為です。
――本の最後で、それでは国民はどうしたらいいのか、という問いに「どん底に落ちるしかない」という答えには衝撃を受けました。
だけど、あきらめちゃいけないと書きました。敗戦後のがれきの山から立ち直ったように、どん底に落とされたら、這い上がればいい。というか、這い上がるしかない。
――そういう状況なんですね?
日本経済は「スピード」という映画に出てくるバスにソックリです。そのバスは時速80キロ以下に速度が落ちると爆発してしまうんですが、かといって走り続けるとガソリンが切れて爆発する。日本経済も同じです。脱法借金をやめられない状況ですが、このままだとやがて円の信用が切れて爆発すると思います。
――背筋が凍ってきますね。しかし、国民にはそんな危機感はまるでありません。アベノミクスでGDPも上がった、株も上がった。やがて賃金も上がるだろう。政府はそう言っています。
異議ありです。2016年12月にGDPの計算方法が改定されました。国際的な算出基準「2008SNA」に合わせて、研究開発費などをGDPに入れるようになった。しかし、問題は「2008SNA」と全く関係がない「その他」という部分です。この部分によってアベノミクス以降、大きくGDPがかさ上げされているのです。
1994年まで遡って改定されたのですが、「その他」のかさ上げ額は、94年度から99年度の平均はマイナス約3・8兆円。2000年から12年度はマイナス約0・7兆円。ところが、アベノミクス以降は、13年度4兆円、14年度5・3兆円、15年度7・5兆円と平均でプラス約5・6兆円にもなるのです。