「団塊の秋」堺屋太一著
■「団塊世代」が歩む2028年までのシミュレーション小説
ベストセラーになった「団塊の世代」刊行から37年。当時20代後半だった団塊の世代は60代半ばになり、人生の秋にさしかかっている。さて、彼らは、そして日本社会はこれからどうなるのか。彼らが80代に突入する2028年までを予測した近未来シミュレーション小説。
主な登場人物は男6人、女1人。1971年、大学卒業の春に、大金をはたいて「カナダ・アメリカ15日間の旅・学生割引」に参加したメンバーという設定だ。その後も付き合いが続き、数年に一度、会合が開かれて、それぞれの人生の紆余(うよ)曲折が語られる。
弁護士から国会議員に転じ、2度の落選を経験してなお奮闘する石田。リタイア後、個人タクシーで月10万円を稼ぐ山中。夫婦揃って公務員、年金はたっぷりあるが息子も孫も寄りつかないのが悩みの春枝。会社倒産から立ち直り、家族で「電力畑」経営に乗り出した上杉。養護施設に入ったかつての厚生官僚、加藤。
バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災と、日本社会の変動とともに、彼らの人生も変転する。作者が描いた団塊の世代は、みんながみんな年金を食いつぶす社会のお荷物というわけではない。そこに救いがあり、この世代の未来に光が見える。