「『父』という異性」下重暁子著

公開日: 更新日:

 父は画家になりたかったのだが、代々軍人の家の長男だったためそれは許されず、職業軍人となった。権威の象徴であった父が敗戦で公職追放となり、慣れぬ仕事に手を出して失敗する姿は、著者には落ちた偶像と映った。父の死後、家を整理していたとき、父が描いた「あぶな絵」の模写が出てきた。著者は、大学に職を得るまで、父が生活のためにそういう絵を描いていたことを初めて知った。父が誇りをかなぐり捨てて、こんな形で絵と対峙しなければならなかった、その心情を思ってたまらない気持ちになった。

 父に反抗し続けた娘が父との相克を見つめたエッセー。(青萠堂 1000円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・大山悠輔「5年20億円」超破格厚遇が招く不幸…これで活躍できなきゃ孤立無援の崖っぷち

  2. 2

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 3

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  4. 4

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  5. 5

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  1. 6

    指が変形する「へバーデン結節」は最新治療で進行を食い止める

  2. 7

    ジョン・レノン(5)ジョンを意識した出で立ちで沢田研二を取材すると「どっちが芸能人?」と会員限定記事

  3. 8

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 9

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  5. 10

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も