「『父』という異性」下重暁子著

公開日: 更新日:

 父は画家になりたかったのだが、代々軍人の家の長男だったためそれは許されず、職業軍人となった。権威の象徴であった父が敗戦で公職追放となり、慣れぬ仕事に手を出して失敗する姿は、著者には落ちた偶像と映った。父の死後、家を整理していたとき、父が描いた「あぶな絵」の模写が出てきた。著者は、大学に職を得るまで、父が生活のためにそういう絵を描いていたことを初めて知った。父が誇りをかなぐり捨てて、こんな形で絵と対峙しなければならなかった、その心情を思ってたまらない気持ちになった。

 父に反抗し続けた娘が父との相克を見つめたエッセー。(青萠堂 1000円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋