縦横無尽!食の世界に挑む本特集
「東西の味」稲田俊輔著
シンプルな卵かけごはんから3つ星レストランの逸品(シグネチャーディッシュ)まで、食の世界は縦横無尽に広がり、果てがない。今週は、そんな食の世界に独自の切り口で挑んだ4冊を紹介する。
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「東西の味」稲田俊輔著
料理人で飲食店プロデューサーの著者は、新たな土地を訪ねるたび、その食文化に翻弄されてきたという。「発見があり、戸惑いがあり、そしてその戸惑いを乗り越えた先に愛着も生まれ」たと。
本書は、誰にもおなじみのメニューを取り上げ、土地によるそれぞれの味の個性について語るエッセー。
まず俎上に載せられるのは「うどん」。
今、日本を制覇するのは讃岐うどんだが、著者が日本一だと思うのは、京都の街中の定食屋やうどん屋で食べられるうどんだという。故郷の鹿児島や讃岐のいりこと昆布出汁とは異なる高級感が出汁にあり、同じうどんながら讃岐とは全く異なる京都のうどん。さらに讃岐の対極にある福岡の「やわうどん」や、知られざる東京名物「鍋焼きうどん」など、各地のうどんを語りつくす。
以降、お好み焼き、餃子、から揚げなど、誰もが一家言もつメニューを深掘り。実名店舗も多数登場し、グルメガイドとしても読める。
(集英社 1870円)
「自炊の風景」山口祐加著
「自炊の風景」山口祐加著
「自炊する人を増やす」をテーマに、料理初心者向け教室を催す活動などをしている「自炊料理家」によるエッセー集。
著者が初めて料理を作ったのは7歳のころ。仕事で疲れ切って帰宅した母親から頼まれて作った野菜入りうどんだった。初めての料理にしてはおいしくでき、母親は「ありがとう。おいしい」を繰り返した。その日以来、楽しい・おいしい・褒められるの三拍子がそろった料理は、著者の趣味となったという。図書館で借りてきた子ども向けのレシピ本を片っ端から試し、以降も中学・高校・大学と料理を作っては友達にふるまってきた。
そんな料理との出合いから、自炊料理家を名乗り活動を始めるきっかけ、そしてところ変わればスタイルも味も異なる世界各国の自炊料理を体験して歩いた旅の記録まで。
文中に登場する料理の中から17レシピも掲載。料理が苦手という読者にも料理をしてみようかと思わせてくれるはず。 (NHK出版 1760円)
「戦国めし、南蛮メシ」遠藤雅司(音食紀行)著、伊川健二監修
「戦国めし、南蛮メシ」遠藤雅司(音食紀行)著、伊川健二監修
戦国時代、日本に宣教師たちが到来、日本からもローマに天正遣欧使節が派遣され、交易が盛んになった。そんな時代に南蛮人が目にした日本の料理を「戦国めし」、天正遣欧使節がヨーロッパで味わった各国の料理を「南蛮メシ」と名付け、当時の双方の食文化を解き明かす歴史エッセー。
16世紀の日本では肉食は忌避されていた。しかし、ルイス・フロイスの「日本史」によると、実際は、多くの日本人が受け入れ、秀吉も好んだという。キリシタン大名の高山右近は陣中食として牛肉料理を振る舞ったそうだ。その料理「くじいと」をはじめ、イタリアで狩りに招かれた天正遣欧使節の一員が仕留めたイノシシで作られたスープ「カルド・ラルデーロ・デ・プエルコ・サルヴァヘ」や、島津軍との戦いに敗れた大友宗麟らが敗走中に食べた青竹で炊いた赤米ごはん、信長がフロイスをもてなした際に出した「鯛汁」など。
各料理40品の再現レシピとともに紹介。 (亜紀書房 2200円)
「うまい旅」笠原将弘著
「うまい旅」笠原将弘著
時に月の半分以上も出張するという人気料理人による食べ歩きエッセー。
博多では、出友(出張先に住んだり、出張先で親しくなった友人)に誘われ、彼が予約してくれた人気居酒屋を訪問。とり貝の刺し身、岩ガキ、カマスの炙り、キンキの煮つけなど、出てくる料理は何を食べてもおいしい。ただそれは序章に過ぎず、友人が一番食べてもらいたかったのは、なんと塩むすびだったという。宴も終盤となりいよいよ塩むすびを注文。味はもちろんだが、著者は、炊きたてのご飯を素手で豪快に握る大将の手から目が離せなかったという。
ほかにも、妖怪みたいな常連客の行動に驚愕する京都の老舗居酒屋、噴き出す汗の対策のためバスタオル持参で食べる名古屋の台湾ラーメン、メルボルンのレストランのコース料理の合間のサプライズ、そして出張帰りに東京駅で食べる立ち食いそばまで。
出張先で出合ったおいしい店やおいしい料理が実名入りで登場。
(光文社 1980円)


















