<上>「ダルク」では取材依頼の電話をオレが受けて断ることも
自分では「オレほど体にクスリが合う人間はいない」と思っていたほどでした。というのも、クスリの影響で人格が変わっちゃうことを“よれる”というんだけど、それが全然なかったから。むしろ、もともと悪かった滑舌や手の震えがピタリと消えた。「ロレツが回ってないからまた覚醒剤を使ってるだろ」とよく言われるけど、使うと逆に滑舌の悪さが治るんです。だから滑舌の調子良いときは怪しいと思ってほしい(笑い)。幻聴や幻覚もオレは見ないタイプで、集中力が増すから朝まで休まず絵がすごくキレイに描けたこともあった。時間が過ぎるのが早いから、一日中掃除していたことも。だから「ダルク」に来てキレイに掃除してると「使ってない?」って言われる。みんな経験してるから分かるんだよね。
出所後に更生プログラムを受けて、今は「ダルク」のスタッフとしても働いています。日課は朝に掃除をしてコーヒーを沸かしたり、「田代さんの取材をしたい」という電話をオレが受けて、オレが断ったり(笑い)。親が薬物依存の子供を連れて「ダルクという施設を見たい」と相談を受けることもある。
「ダルク」に来てオレにも居場所があると思えるようになった。この年で刑務所に2回も行ってたら世の中、居場所なんてないからね。前に捕まったときは「早くこの過去を消したい」と思ってたけど、今はこの十字架を一生背負っていこうと思える。覚醒剤で捕まった芸能人はクスリのイメージを早く消そうとするけど、オレはそうじゃない。逆の意味でパイオニアになれたらいいと思ってる。
(つづく)