たとえ不安定であっても本人や家族の望み通りの過ごし方を
お腹の中で小腸を囲むように位置している大腸。その大腸のうち、左わき腹あたりからまっすぐ下へ下り、最後にS字を描きながら肛門へと続く部分を「S状結腸」と呼びます。
そのS状結腸の末期がんの男性(80歳)は、がんが肺にも転移していて、余命は2週間と告げられていました。元医師であるその方は、病院から自宅へ戻ってこられました。奥さまは元看護師、息子さんも医師という医療に精通したご家族です。
そのようなご家族が、最期を病院ではなく自宅で、家族そろって看取ることを選ばれたのは、さまざまな事情を総合的に考えた末の決断だったのだと思われます。
病院勤務の息子さんは日々の仕事が多忙で、月に1~2回しか患者さんのもとを訪れることができませんでした。そのため、元看護師である奥さまが常に私たちの診療に同席し、専門職ならではの視点で方針を理解されながら、「点滴は私が管理するので教えてほしい」と、できる限りご自身で患者さんのケアを担おうとされていました。
しかし、病院での看護と在宅療養とでは勝手が異なります。訪問診療や訪問看護が入らない土日を挟んだ3日間のうち、必要な量の点滴を落としきれていない日があったり、点滴のスピードを誤解されていたりすることもありました。


















